ロボットは家族の一員になり得る? 研究者が語る「1家に1台」普及の未来像
インターフェースとして広がる可能性
当社の製品で、とりわけデジタル技術とのインターフェースとしてご好評をいただいているのは、コミュニケーションロボット「BOCCO emo」です。 このロボットを介して家族と音声やテキストでメッセージをやり取りできるほか、「今日はゴミ出しの日だよ」と音声で教えてくれたり、ユーザーが何かつぶやけば、その気持ちに共感してほっぺを赤らめたりしつつ、独自の言葉で応えてくれます。 現在、様々な領域の企業とパートナーシップを築き、すでに本サービス化がスタートしているものもあります。セコム様との共同事業「あのね」もその一つで、「BOCCO emo」を使ったシニア向けの声かけサービスを提供しています。 なかでも特に喜ばれているのが、薬を飲むリマインド機能です。シニアの方が「薬を飲んでね」と自分の子供や孫から言われると、人間同士の感情が邪魔して素直に聞き入れにくいこともあります。でも相手がロボットだとその心配はなく、シニアの方も喜んで応じてくれることが多いそうです。 メッセージというのは単に伝えればよいわけではなく、相手に受容されなければ意味がないので、そこを補完するのがロボットの役割の一つだと考えています。 たとえば車の運転中、急ブレーキや急発進をして助手席の人に注意をされると、イラッときますよね。でも、ロボットが驚いて怖がると、「ゴメンね」という気持ちになって、安全運転を心がけるようになるでしょう。 実際に、「BOCCO emo」とカーナビを連携させた名古屋大学との実証実験でも、ロボットがいるほうがスピードが下がるという結果が出ています。このように「BOCCO emo」は、いろいろなものと連携させて機能を増やせるプラットフォームとなっています。 他にも、ダイエットや語学の習得など、ユーザーがなりたい自分に近づけるようにサポートする機能をどんどん強化することを目指しています。 こういうと、「目標としては、人気アニメの『ドラえもん』のようなイメージですか?」とよく聞かれます。それに対する私の答えは、「YES」でもあり、「NO」でもあります。「ドラえもん」というと、いろいろなひみつ道具を出して問題を解決することが注目されますが、その点は明らかに違います。 私はむしろ、「ドラえもん」の最大の役割は、のび太の成長をサポートすることにあると思うのです。人間は誰しも苦手や弱い部分を持っていて、自分一人で何でもできる人はいません。たとえばダイエットや語学の勉強をすると決意しても、自分の意志だけで続けるのはなかなか難しいものです。そうしたときに、うまく誘導して習慣づけをしてくれるような機能をロボットに持たせる。これが私の考える「1家に1台のロボット」なのです。 ただし、1台にあらゆる機能を詰め込もうとすると、ムダが多く生まれ、高価格になってしまいますので、あまり現実的ではありません。「Qoobo」であればしっぽを振る、「甘噛みハムハム」であれば甘噛みというように、コアな機能だけに絞っているのもそのためです。 できるだけ用途はシンプルにして、1台といわず、2台3台と「多頭飼い」されるようになれば、「ユカイ」の度合いも相乗的に高まるのではないかと考えています。