熊本市電の延伸をめぐる市民の声です。９月ｉ実施設計予算案が議決され、本格的に動き出すことになった『仮称・東町線（ひがしまちせん）』。熊本市がおとといまで開いた市民説明会を取材しました。　 【９月２７日／市議会採決】 熊本市電延伸の実施設計経費４億２０００万円を含む補正予算案が可決された４日後、市は移動円滑推進課の中に『市電延伸室』を設置しました。　 【１０月１日／太江田 真宏 室長】 「都市計画決定の手続きに進みたいと考えている。都市計画決定は年内を目標にしていて、地域への説明会を１０月から開始したい」 市民説明会は今月５日、地元・健軍地域から始まりました。初回、会場に用意された席はすぐに埋まってしまい、市は椅子を追加して対応しました。 市電の延伸が計画されているのは東区の健軍町電停から熊本市民病院まで約１．６キロのルート『仮称・東町線』です。付近には区役所や小・中学校など公的施設が多く立地しています。 熊本市はこのルートのうち市道・自衛隊中通りは『複線』で、県道・熊本高森線については『一部単線』で整備する方針です。 健軍町電停から熊本市民病院までの所要時間は約７分です。概算事業費は約１４１億円。開業予定は７年後の２０３１年度です。 【健軍での説明会・市民】 「金額が高すぎる。なぜ１４１億円か」 【市電延伸室長】 「軌道整備については交付金をいただく想定をしている。道路部分は街路事業が別にあり使える交付金を検討し、国の補助を活用して事業を進めたい」 「高い」と指摘された事業費。市は国の交付金などを活用する考えを示し、実質の負担額はおよそ５５億円と説明しました。 一方、この事業費について、また『一部単線化』が示されていることについてはこんな意見も。 【健軍での説明会・市民】 「一部単線化というのは費用削減のためだと思うが、単線にすることで詰まる（渋滞する）可能性がある。ケチらずに投資すべき」 「車と電車の接触事故とか電車と電車との接触もあるかもしれない。私も一部単線化ではなく複線で通してもらいたい」 【市電延伸室長】 「（一部単線化は）事業効果が早く出る。事業費、地域への影響が最小限で済むということで一部単線を選んでいる」 熊本市は延伸によって、どんな効果を見込んでいるのでしょうか。 【市電延伸室の説明】 「延伸の効果としては１日約２３００人の市電利用者が増える見込み。年間約８４万人の利用者の増加を見込んでいる。これに伴い自動車利用が１日約２０００台削減が見込まれている」　 熊本市は、延伸によって利用者が増え、車の利用が１日２０００台減少すると予測。全市的な渋滞の低減につながるとしています。　 また、この説明会で熊本市は初めて用地買収が必要となる見通しの区域を示しました。 【市電延伸室の説明】 「今回、都市計画変更を行うのはこちらの約６００メートルの区間になる」 都市計画区域へ追加することになった土地は、延伸ルートの中の熊本高森線から自衛隊中通りへのカーブ付近。 用地の調査などの交渉は、今後個別に行うということで、説明会終了後、会場に張られた地図を見て、参加者が直接職員に尋ねる姿が見られました。 【１０月１３日／市民会館大会議室】 こちらは中央区で開かれた同じ説明会。 【市民会館での説明会・市民】 「健軍から東への延長、さらに熊本市民病院まで延伸の狙いはそもそも何か」 【市電延伸室長】 「平成２７（２０１５）年から延伸の計画をしている。そのときからこのルートは候補の中にあったが、平成２８（２０１６）年熊本地震、その後、市民病院の移転が決まり、この事業性が高まったということはあるが、このルート自体はもともと市民病院のためではない。基幹軸の強化を図ることが大事で、〈誰を対象に〉と言われると市内全域となる」 【市民会館での説明会・市民】 「市電は道路の中に設置するので（車は）今まで右折できた所ができなくなる。新たに軌道と信号を追加されるので、ものすごく渋滞するのではないか」 【市電延伸室長】 「熊本高森線は、今の車線数は確保して計画をしている。自衛隊中通りについては今後、設計する中で地域とも意見交換しながら検討を深めていきたいと思っている。これについては今からだ」 １５日まで４回開かれた説明会、参加者は計１６５人でした。 【市電延伸室　太江田 真宏 室長】 「意見交換しながら反映できるところは反映させていただく。できないところも、しっかり市の考えを説明して理解を求めていくことかなと思っている」 動き出す市電延伸。熊本市は現在、基本設計の修正を行っていて、今年度中には実施設計、用地測量に入る見通しです。 地権者との用地交渉は、再来年度からの予定としています。