自由な曲線が縦横無尽に駆け巡る。注目ブランド〈ミカゲ シン〉の初の直営店。
東京・青山に誕生したファッションブランド〈ミカゲ シン〉の初の直営店は、曲線を描くステンレスパイプが空間を横断する大胆なデザイン。設計を手がけた建築家の小田切駿と、ブランドデザイナーの進美影に話を聞いた。 2019年にNYでスタートし、性別や年齢、国籍にとらわれない構築的なデザインで、国内外にファンを持つ〈ミカゲ シン〉。2021年には拠点を東京に移し、さる2023年9月に、ファンからの熱いリクエスト受けてリアルショップ〈MIKAGE SHIN AOYAMA〉がオープンした。デザイナーの進美影は待望の直営店について、こう語る。 「モードブランドなので、しかるべきコンテクストのある場所に店を出したいと思いました。青山は老舗から気鋭までさまざまなブランドが集まる理想的な立地。海外のお客様も足を運びやすいトラフィックの良さも魅力です」(進)
3階建のビルのうち、1階と地下1階の2フロアで店舗を構成。内装設計を手掛けたのは、進と同年代の建築家、小田切駿だ。 「〈ミカゲ シン〉はデビュー当時から店舗を持たず、ECサイトを中心にファンを増やしてきました。そういったブランドが今、店舗を持つ意味を考えた時に、効率的に服を見せるだけではなく、ブランドの世界観を体験でき、さらに空間の中でインスタレーションのような試みができたらと思いました。わざわざ行きたくなる。そんな場所を目指しました」(小田切)
店舗の顔となる1階は、天井高がもある吹き抜けの空間。そこにステンレス鋼材のパイプが張り巡らされている。 「縦長のプロポーションの空間に対して、どんな家具を置いても高さに負けてしまう気がしました。建物の縦のボリュームを活かすため、空間を演出しながら、什器の役割も果たすものを考え、このステンレス鋼材の構造体のアイデアが浮かび上がったんです」(小田切)
手で曲げた針金を使って、空間に張り巡らせた1/20の模型を最初に見た時の感想を、進はこう振り返る。 「見たことのない独創的なデザインで感激しました。アートミュージアムのような空間にしたいというこちらの意図を汲んでくださったと感じています」(進) 人が針金を曲げて生まれた独特の歪みを持つ曲線。それを太さ25mmのステンレス鋼材で表現した。