安価で高利回りだが…うっかり手を出せば大後悔も!?「老朽化物件」投資のむずかしさ【不動産専門弁護士が解説】
区分マンションの場合(1)…共有部と専用部に関するトラブル
ここからは老朽化したマンションの一室を区分所有している場合の対策です。 区分所有マンションでトラブルが起きた場合に大変なのは、マンションの部屋自体はオーナーのものですが、廊下や共用設備といったほかの部屋と共用する設備は、管理組合と呼ばれる、マンションの所有者らが組合化したものが運営している、というところです。 業者などをしっかりと動かせる管理組合ならいいのですが、半ば放置され、古くからいる大家さんたちだけの自治組織のような場合は問題です。専門家ではないことから、運営・管理が杜撰になっているケースがよくあります。そうなると「必要な共用部の修繕がなされていない」「共用部である廊下で雨漏りがおきているのに直してくれない」といったトラブルになりかねないむずかしさがあるのです。 区分マンションの雨漏りで厄介なのは、大家側と管理組合側、どちらが直さなければいけないかが変わってくる、という点です。 戸建ての場合は、大家が直さなければいけないことが明確であり、費用的には大変ですが対策の保険もあります。しかし、区分マンションで雨漏りが起きると「大家側と管理組合側、どちらのトラブルですか?」ということになるのです。
区分マンションの場合(2)…大家側と管理組合側、責任はどっち?
大家が所有しているのは部屋単体、法律的には「専用部」と呼ばれる箇所のみですが、一方で、廊下は「共用部」であり、管理組合が持っていることになっています。そのため、廊下の故障なら管理組合が直し、自分の部屋の故障なら大家が直すことになるのですが、その判断で揉めることがあるのです。 多くの場合は保険に入っているため「保険で直せばいいじゃないか」と思われがちですが、「どちらの保険を使うのか」という問題のみならず、保険会社の利害も出てくる場合もあります。 よくあるのが、管理組合の動きが悪く「賃借人が怒るから、自分の保険で直したい」と大家が保険会社に連絡しても、保険会社側が「これは専用部ではなく、共用部の可能性が高いので保険は出せません」というケースです。 このようなトラブルが起こると、弁護士と建築士が現場に立ち合い確認に行き、建築士に構造的に見てもらい、どちらから雨漏りしているのかをジャッジする、といった事態に発展します。 それほど、共有部と専用部に関するトラブルは起きやすいのです。
老朽化件にチャレンジできるのは「修繕関係の差配ができる人」
老朽化物件は確かに利回りが高いのですが、入居者の入れ替わり時にトラブルも起きやすく、自分でどこまでの修繕を行うのかのジャッジができなければなりません。 老朽化件を扱う以上は、修繕関係の差配ができること、もっというなら、修繕関係をお手頃価格で引き受けてくれるリフォーム会社等との繋がりがないと、行き詰まったり、トラブルになったりするケースも考えられます。 その点をよく考慮したうえで、物件を検討することをお勧めします。 (※守秘義務の関係上、実際の事例と変更している部分があります。) 山村法律事務所 代表弁護士 山村暢彦
山村 暢彦
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