1勝1敗の神戸で光るMF井手口陽介の走破力 吉田監督「予想したレベル以上」
神戸はホーム開幕の2日・柏戦を0-1で落とし、シーズン1勝1敗としている。優勝した昨年の戦術をベースとし、さらなる層の厚さと強度を目指すチームにあって、目を見張るのはセルティックから移籍した日本代表経験のあるMF井手口陽介(27)の存在感だ。アウェーだった初戦の磐田戦は攻守の起点となり、MF汰木康也(28)の先制点を演出するなど勝利に貢献。2024年版の神戸スタイルを体現する活躍だ。 井手口はアンカーもこなすが、神戸ではインサイドハーフを担う。吉田孝行監督(46)は磐田戦後「運動量はかなりチームの助けになった。あの位置を陽介にするかすごく迷ったが、予想したレベル以上のものを出してくれた」と舌を巻いた。2日の柏戦も相手攻撃陣がボールを持つとぴたりとマーク。味方が攻勢に入るとスペースに入り込み巧みにパスを出した。素早く的確なポジション取りで、相手にとって“嫌な選手”に映る役割を果たしている。 ここまで2試合でフル出場。磐田戦では「あまり考え過ぎずに動いて、迫君(大迫)が動いたら空いたところに動くというのを意識しながらやっていた」と空いたスペースにうまく入って攻撃の原動力となった。 Jリーグ公式サイト内の第1、2節の個人走行距離では、井手口は磐田戦が全体の7位となる13・03キロ。柏戦は同12位の12・73キロ。トップ20に2試合とも名を連ねた選手は井手口と福岡FW岩崎悠人、磐田MF上原力也、鳥栖MF河原創、東京V・MF見木友哉の計5人だ。神戸のチーム全体の走行距離は磐田戦が全体の14位で119・373キロ、柏戦は同15位で119・238キロとやや低い。戦い方にさまざまなスタイルがあるため、チーム全体の走行距離が長ければ勝利に近いとは言い切れないが、井手口の走行距離は神戸の強力なエンジンになっている。 豊富な運動量は、練習への地道な取り組みが原点となっている。自身のサッカー哲学について「毎日の練習から100%を出し切る」と話していた沖縄キャンプ。距離とタイムを決めてひたすら一定の速度で走り込むメニューでは、苦戦する若手を横目にタフに消化していた。 期限付き移籍で福岡でプレーした昨年は、右足首骨折の影響もあってJ1リーグ21試合出場にとどまった。不完全燃焼に終わったシーズンの悔しさを新天地でぶつける覚悟で神戸に来た。「1年間通してけがをしないことが一番の目標。その中で少しでも毎試合、ボールに絡めるような働きをしたい」と話す攻守の要が、神戸のサッカーをさらに動きのあるものに変えている。(デイリースポーツ・中野裕美子)