「知らない人について行っちゃダメ」の落とし穴 子どもを犯罪から守るために伝えるべき「最も重要でわかりやすい」ポイント【専門家監修】
「知っている人は安全」と思い込んでしまうことはとても危険
さらに、問題なのは、「知っている人は安全」と思い込んでしまうことです。それは、とても危険です。実際、千葉県松戸市の女児が連れ去られ、殺害された事件(2017年)では、「知っている人」が犯人でした。この誘拐犯は、通学路の見守りに立っていた小学校のPTA会長だったのです。殺害された女児は、毎日、登校時にこの犯人に挨拶していたわけです。 このように、だれが犯罪を企てているかは見ただけではわかりません。重要なのは「知っている人」か「知らない人」か、ではないのです。
子どもに教えるべきは「景色」
では、何が重要なのでしょうか。それは景色です。安全と危険を見ただけで判断できるのは景色だけです。なぜなら、景色はウソをつかないからです。 人はうそをつきます。「知っている人」だと思わせるウソ、「親の知り合い」だと思わせるウソ、「安全な人」だと思わせるウソなど、たくさんのウソを人はつきます。でも、景色はウソをつきません。 「入りやすい場所」と「見えにくい場所」が危険というメッセージを常に発信しています。こうした場所で、犯罪者は子どもに声をかけてくるのです。したがって、人を見るのではなく、景色を見れば、今が警戒すべきときなのか、声をかけてきた人を信用してもいいのかが的確に判断できるわけです。 ※詳しくは、【関連記事】の「公園なら安全とは限らない!?子どもだけで遊ぶ時の防犯上の注意点は?」をご覧ください。
まとめ & 実践 TIPS
子どもを狙う手口は、年々巧妙になっています。特に注意が必要なのが「知らない人についていかない」というルール。犯罪者は顔見知りになったうえで、あるいは、顔見知りを装って狙ってくるケースが多いため注意が必要です。よくある誘拐の手口を用いてケーススタディを行っておくことなどで、防犯対策を強化しておきましょう。
プロフィール 小宮 信夫 こみや のぶお 立正大学 文学部社会学科教授 社会学博士。ケンブリッジ大学大学院犯罪学研究科を修了。国連アジア極東犯罪防止研修所、法務省などを経て現職。地域安全マップの考案者であり、警察庁や文部科学省、各自治体で防犯に関わる委員を歴任。テレビ、ラジオへの出演や全国各地での講演多数。著書に『写真でわかる世界の防犯 ――遺跡・デザイン・まちづくり』(小学館、全国学校図書館協議会選定図書)、『犯罪は予測できる』(新潮新書)、『子どもは「この場所」で襲われる』(小学館新書)などがある。