ドイツで多発する激甚水害、気候変動のコストは誰が負うべきか?
水害保険の強制化をめぐる激論
ドイツでは現在、水害をカバーする保険を強制化するべきかどうかについて議論が行われている。16の州政府は、水害保険の強制化を求めている。社会民主党(SPD)の連邦議会の議員団で幹事長を務めるヨハネス・フェヒナー議員は6月4日、「ドイツでは地球温暖化のために、極端な気象災害の頻度が増えている。このため、少なくとも個人が住む家については、水害保険を強制化するべきだ。公的な再保険制度を創設して、民間保険会社の支払保険金額の合計が一定の水準を超えたら、政府が財政出動するような仕組みを作るべきだ」と提案した。つまり民家のための建物保険に入れば、水害による経済損害も自動的にカバーされるようにするべきだというのだ。 これに対して保険業界は、「水害保険の強制化だけでは全く不十分だ」として反対している。GDVのイェルグ・アスムッセン専務理事は、「水害保険を強制化するだけでは、経済損害を減らすことにはつながらない。重要なのは、法律によって減災努力を義務付けることだ。たとえば、河川の流域など、水害の危険が高い地域に家屋やマンションを建てることを禁止するなど、リスクを減らす努力と組み合わせることが不可欠だ」と主張している。 GDVは、地球温暖化の進行とともに気象災害の頻度が将来高まることが予測されるので、減災努力を行わない場合、ecの保険料が将来大幅に高くなると警告している。保険業界は、減災のための法的枠組みが整備されるならば、損保業界はリスクに見合った保険料に基づいて、既存・新規の保険契約を問わず全ての建物保険に水害カバーを自動的に付け加える準備があると説明している。保険業界は、「まずリスクマネジメントと法律の整備によって、洪水による損害を減らそうとする努力が先決だ。さもないと、気候変動のために増加する損害額を、保険業界が負担させられることになる」と警戒しているのだ。 またGDVのアスムッセン専務理事は、「バーデン・ヴュルテンベルク州が1994年まで持っていた洪水に関する強制保険も、将来の制度の見本にはならない。その理由は、当時の公的保険の保険料水準が、水害リスクを十分に反映していなかったからだ」と述べている。