トランプ再び(3)日本はどう向き合うべきか
日本はゼレンスキー氏の判断を支持すればいい
再びトランプ政権になることで、ウクライナでの戦争がどうなるのかにも関心が集まっています。彼は「自分だったら24時間で戦争を終わらせる」と豪語し、ロシアのプーチン大統領に対しても現職のバイデン大統領ほどには嫌悪感を持っていないように見えます。そこでトランプ政権がウクライナにドンバス地域などをロシアに割譲するように仕向けて戦争を終わらせるのではないかと懸念されています。実際にバンス次期副大統領はそのような案を出しています。これではロシアの「やり得」になるのではというわけです。 しかし、実際に決めるのはウクライナのゼレンスキー大統領です。今後のことは彼の判断にすべて掛かっている。もしアメリカが支援をしなくなれば、北大西洋条約機構(NATO)の国々も支援を縮小するでしょうから、ある程度のところで折り合いをつける必要が出てくる。そこでゼレンスキー大統領が譲歩する決断をしたら、日本はそれを支持すればいい。ウクライナが一切の譲歩を拒んで討ち死にするなんてことはあり得ないのだから。 ゼレンスキー氏の顔が立つやり方として考えられるのは、停戦の合意はするけれど、占領された領土を放棄するのではなく、請求権を残して、将来の課題にすることだと思います。決して「ロシアに差し上げます」ではない。一方、ロシアの側はウクライナがあきらめたものと見なして停戦に応じるという格好になるのではないでしょうか。 もちろん国連安全保障理事国のロシアが国連憲章2条(武力不行使原則)を蹂躙(じゅうりん)して隣国を侵略したのに、撤退しないまま国際社会が追認してしまうのは、北方領土問題を抱える日本としていいのかって議論はあるでしょう。だけど、ゼレンスキー大統領が「やむを得ない」と判断した時に、日本が「いやいや、もっと頑張れよ」と言う立場にはないということです。 別に大国アメリカに対して卑屈になれと言っているわけではありません。対ミャンマーだって、対イランだって、日本は自国の利害や理念に基づいてアメリカとは違う外交政策を進めてきた。決してアメリカの言うなりにはなっていない。ただし、「あんたの言いなりになんかならないよ」ってたんかを切ったりしないことです。