『ジャン=リュック・ゴダール/遺言 奇妙な戦争』予告編 蓮實重彦、菊地成孔らコメントも
2月23日に全国公開される『ジャン=リュック・ゴダール/遺言 奇妙な戦争』の予告編と著名人コメントが公開された。 【写真】フィルムを光に照らし覗くジャン=リュック・ゴダール 2022年9月に亡くなったジャン=リュック・ゴダールが最後に手がけた本作。手書きの文字、絵、写真、そして映像がコラージュされ、音楽やナレーションが一つになった、彼の芸術の集大成とも言える作品だ。 公開された予告編には、ゴダールの肉声が含まれており、製作を担ったサンローランプロダクションに映画の話を持ち掛けた時期から、本作が生まれた経緯を振り返っている。ゴダール自身が呟く「ちょうどプリニエが政治と革命という昔の情熱に回帰したように、また映画が作れるだろうか」という言葉も確認できる。 また、映画評論家の蓮實重彦、音楽家・文筆家の菊地成孔ら、本作をいち早く鑑賞した著名人からコメントも寄せられた。 コメント ■蓮實重彦(映画評論家) 死後のゴダールは、存在しない作品の予告編とやらでまたしても見るものを驚かせる。ゴンクール賞受賞作家シャルル・プリニエの『偽旅券』の映画化が叶わず、その詳細なシナリオ構成をキャメラ担当のアラーニョに託し、これは自分の最高傑作だと呟いたというのだから。実際、作中に再現される『アワーミュージック』の一景を目にしただけで、誰もが涙せずにはいられまい。 ■堀潤之(映画研究者) 自作『アワーミュージック』をアップデートしつつ、スペイン内戦からアラブの春に至るあらゆる闘争をごった煮にした本作は、シモーヌ・ヴェイユやハンナ・アーレントに連なる新たな抵抗する女性の人物像「カルロッタ」が生まれようとする現場に我々を立ち会わせてくれる。 ■菊地成孔(音楽家・文筆家・「ラディカルな意志のスタイルズ」主宰) 21世紀/1人ジガ・ベルトフ集団/最後のヌーベル・ヴァーグ/最新作/輝き/20年後の素顔に驚かされる/サンローラン/遺書/市場なきクール/最短の最高傑作/これこそがコラージュ/これこそが反資本主義/ ■万田邦敏(映画監督) 私は思春期に、まるで宇宙人が作ったかのようなゴダール映画に遭遇し、確実に何かを殺され(その代わりに何かを生かされ)、どこかを乗っ取られてしまった。この映画がゴダールの遺言なら、そのすべてを自分の戒めとしようなどと勝手に思い込んでしまうのも、そのために違いない。
リアルサウンド編集部