福岡高裁 科捜研が行った「鑑定」の信用性を否定 常習特殊窃盗などの罪に問われた男の裁判で1審判決を破棄
弁護士事務所などに侵入して盗みを繰り返したとして、常習特殊窃盗などの罪に問われ、1審で懲役9年の判決を受けた中国籍の男について、福岡高裁は15日、1審判決を破棄し、懲役4年の判決を言い渡した。判決は、1審が有罪の大きな決め手とした福岡県警科学捜査研究所の「工具痕鑑定」の信用性を否定し、1審判決が有罪認定した15の窃盗事件のうち12事件で「犯人性を認定することはできない」などとしている。
1審判決は懲役9年 15事件すべてを被告の犯行と認定
福岡地裁の1審判決によると、常習特殊窃盗などの罪に問われた盧兵被告(57)は2010~18年、名古屋市や福岡市などの弁護士や司法書士らの事務所に侵入し、現金約2300万円を盗むなどしたとして、懲役9年の判決を言い渡された。
有罪の根拠は福岡県警科学捜査研究所の「工具痕鑑定」
1審判決では、現場の出入り口ドアや金庫に残された工具痕について、福岡県警科学捜査研究所の「工具痕鑑定」が「盧被告が所持していたバールでできたものと考えられる」としたことなどを踏まえ、起訴された15の窃盗事件を有罪と認定していた。
福岡高裁「工具痕鑑定のみで犯人性を認定することはできない」
一方、15日福岡高裁で言い渡された控訴審の判決は、「工具痕鑑定」の信用性を否定した。松田俊哉裁判長は「工具痕」について、工具を何度使っても同じ特徴が残るかどうかは疑問が残るなどと指摘。「工具痕鑑定のみで犯人性を認定することはできない」などとして、15事件のうち12事件を、盧兵被告の犯行とは認定できないと判断した。
3事件のみを有罪認定 懲役4年に
3事件はほかの証拠などから有罪と認定した。その上で、1審判決(懲役9年)を破棄し、懲役4年の判決を言い渡した。