「若者がどんどん減っていった…」 アミュプラザ鹿児島が変えた人の流れ 回遊性を取り戻そうと天文館の模索は続く
鹿児島市の天文館地区は20年前、JR鹿児島中央駅ビルのアミュプラザ鹿児島(同市)の開業に揺れた。We Love天文館協議会の牧野繁会長(68)=まきの商店会長=は「それまでお出掛けといったら天文館だったのに、若者を中心に人の流れがどんどん減っていった」と振り返る。 【写真】鹿児島市中心市街地の主要な商業施設の位置関係をまとめた地図
追い打ちをかけるかのように、市南部地区にも大型商業施設が相次ぎ開業し、危機感を覚えた天文館地区の店主らは2007年6月、同協議会を立ち上げた。百貨店の山形屋をはじめ、金融機関といった異業種も巻き込み、会員は現在約90社。にぎわい創出に向けたイベントなどに取り組む。 ただ、アミュ開業前は少なかった商店街の空き店舗は年々目立ち始め、新型コロナウイルス禍で加速。牧野会長は「アミュのように、1日中楽しめる時間消費型の街にできないか。天文館の強みは多様性。可能性はある」と模索を続ける。 ■□■ アミュ開業以降の商圏分散化は、天文館に大きな変化をもたらした。三越鹿児島店は業績低迷で09年に閉店し、跡地にマルヤガーデンズが開業。山形屋はコロナ禍の影響もあり、私的整理を活用した経営再建に乗り出した。 一方で、中央駅横の一番街商店街は現在、空き店舗が放置されることはないという。同市が隔年実施する歩行者通行量調査で、22年度は10年前と比べ2.5倍の1日約6000人に増えた。21年6月には商店街再開発の商業施設「Li-Ka(ライカ)1920」もオープン。商店街振興組合の長岡洋一理事長(66)は「アミュのにぎわいがなければ、ライカもできなかっただろう」と明かす。
そのような中、山形屋とマルヤ、アミュは12年から、3館合同福袋を販売するなど連携を深める。共通の脅威としてネット通販があり、街へ出かけるきっかけづくりが狙いだ。これまでクリスマスやハロウィーンなどで30もの合同企画を開催。マルヤの松見千種広報室長(50)は「時季や流行を捉えたイベントなどで連携し、実店舗で買う楽しさを伝えられたら」と話す。 ■□■ 「それぞれのエリアの強みを生かしてみては」と提案するのは、九州経済研究所(同市)の福留一郎経済調査部長(58)。アミュは交通の要にあり県外客や若者を取り込む一方、天文館は老舗感や文化的要素が魅力とみる。「客が相互に行き来することができれば、中心市街地全体の魅力が底上げされる」と確信する。 天文館と中央駅は直線距離で約2キロ。両地区の商店街が期待を寄せるのが、JR九州などが検討する加治屋町1番街区の再開発だ。マンションや商業施設などが入る複合施設で、両エリアの中間地点にある。天文館のど真ん中には22年4月、再開発ビル「センテラス天文館」も開業。市電沿いには商業施設が並ぶ。
アミュを運営するJR鹿児島シティの山崎慎介社長(53)は「お互いに切磋琢磨(せっさたくま)し魅力を高め合いたい。その上で回遊性を意識した街づくりも進められれば、鹿児島の活性化にもつながる」。アミュの成長とともに、中心市街地が一体となる巨大商圏誕生を見据える。 (連載「フォローアップ経済かごしま アミュ開業20年」㊦より)
南日本新聞 | 鹿児島