ドラマも舞台も大活躍の向井 理。芝居で大切にしていることとは?
現在放送中のドラマ『ダブルチート 偽りの警官』で警官と詐欺師という二つの顔を演じ、その多彩な表現力で魅力を発揮している向井 理。舞台『ウーマン・イン・ブラック~黒い服の女~』では勝村政信との2人芝居に挑む。 向井 理さんインタビューフォトギャラリー
芝居の原点に挑む
作品に向き合うということは、向井自身にとってどんな意味があるのだろうか。 向井: 毎回思いますが、舞台はお芝居の原点だと思うんです。目の前にお客さんがいるのは舞台でしかあり得ないことであって、リアクションがその場で来ます。ですからこの原点に取り組むことはとても大事だと思います。舞台はスタートからカットまで演じる映像の世界よりも、長い時間を演じ続けなければならないので、集中力と体力が必要です。さらに、台詞は同じでも、毎日何かが違っていて、同じ景色はないので、それが難しいところでもありますし、楽しめるようになるまでにも時間がかかります。楽しいからやっていますとか、好きだからやっていますとかいえるような単純なものではない、不思議な存在だと思います。中でも2人芝居は今まで経験したことがないのでハードルも高いでしょうし、単に楽しかったなというだけでなく、挑戦する甲斐があります。僕にとって初めて挑む壁だと思います。
大切にしている“考える時間”
出演作が多く多忙な彼は、自分の時間というものを確保できるのだろうか? 向井: 部屋の電気がほとんど消えるまでは、家族として行動することを大事にしていますけれど、リビングにしか電気がついていない時間帯になると、そこから自分の時間になります。台本を読んだり、お酒を飲んだりしながら、いろいろと考える時間ですね。仕事から放れた上で、いろんなことを考える時間はすごく大事だと思います。 今は台本を読むので、毎日読書しているようなものですね。昨年も『ハリー・ポッターと呪い子』というイギリスの戯曲を演じましたが、翻訳された戯曲で特にイギリスのものは、ちょっとした言い回しに特徴があったり、シニカルだったりするので、日本人の言葉の感覚とは違うんです。文化的な背景や思考が違うのに、それに慣れるのにも時間がかかります。意味はわかっていても、自分が言いたいニュアンスと文字が合っていないというか……。冒頭に何ページか続く長台詞があるんですが、それがクリアできたら一気に入って行くという感じになる気がしています。翻訳をされた小田島さんとは面識がありますし、僕は脚本家や翻訳の方にはリスペクトがあるので、一言一句をちゃんと演じたいという思いがあります。そこにすりあわせていくのはすごく難しいと思います。 台本を紐解き、考えるために、自分の大切な時間を使っている。その成果が舞台に表れることだろう。 向井 理(MUKAI OSAMU) 神奈川県生まれ。2006年に『白夜行』でドラマデビュー。以降、多くのドラマ、映画、舞台作品で活躍。NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』(2010年)、NHK大河ドラマ『江~姫たちの戦国』(2011年)、映画『僕たちは世界を変える事が出来ない。』(11年)、ドラマ『パリピ孔明』(23年)など出演多数。直近では『ダブルチート 偽りの警官』に出演