党首の女性スキャンダル 国益損なう危うさ自覚を 書く書く鹿じか
昭和30(1955)年の保守合同の立役者で「自民党を創った男」と呼ばれる三木武吉は、衆院選の立会演説会で「ある有力候補は愛人が4人もいる。かかる不徳義漢が国政に関係する資格があるか」と攻撃され、こうやり返した。「4人ではなく事実は5人であります。いずれも年を取ったが、これを捨て去るごとき不人情はできませんから、みな今日も養っております」。会場は笑いと拍手に包まれ、三木はトップ当選した。 【写真】玉木氏が手に持った不倫釈明の応答要領 「好意持った」に下線が 「本当に愛情を持ち続けているのは女房だ。ほかの女は好きになったというだけだ」とも言っていたが、こうした論理は現代では通用しない。政治家でなくても「女性の敵」と見なされるだろう。 三木と同じ香川県出身で、国民民主党の玉木雄一郎代表に不倫スキャンダルが発覚した。元グラビアアイドルとホテルで密会していたことが、写真週刊誌にすっぱ抜かれた。時代が違うから、郷土の先輩のように開き直ることはできない。すぐに記者会見して「報道された内容はおおむね事実だ」と認め、「浮かれていた部分があった」と釈明した。素早い対応と、言い逃れしなかったのは、危機管理として合格点である。 国民民主党は衆院選で議席を4倍に増やした。年収103万円を超えると所得税が課される税制の見直しや「手取り増」の政策が支持された。一躍、政局のキャスチングボートを握る存在になり、少数与党に転落した石破茂政権にとっては、味方につけておきたい。 そのせいか、玉木氏のスキャンダルは大騒ぎにならず、自民、公明との協議で「103万円の壁」の上限引き上げなどを経済対策に盛り込むことで合意した。国民民主党の支持率も上昇した。だが、どうも釈然としない。 これまでの中堅・若手議員の不倫問題とは違い、政党の代表なのである。明らかになったのは特別国会で首相指名選挙が行われた日だが、「玉木雄一郎」と書いて投票した国民民主の議員は「何やってんだ!」と思っただろう。7月に密会していたというから、もし衆院選の期間中に報道されていたら、選挙結果に影響を及ぼしたかもしれない。 「ハニートラップ」という言葉は、スパイ小説の大家、ジョン・ル・カレの造語で、色仕掛けの諜報活動を意味する。橋本龍太郎元首相は艶聞が多く、駐日中国大使館に勤務経験のある女性通訳との関係が取り沙汰された。女性は北京市公安局の情報工作員だったという。