「まさにクールビューティ…」女優・浅野温子が「憧れの女性像」で魅了した“伝説ドラマ”
■社会現象も巻き起こした恋愛ドラマ『101回目のプロポーズ』
浅野さんは『抱きしめたい!』をはじめ、その後も『世界で一番君が好き!』などトレンディドラマを代表する女優として活躍していく。これらのドラマでは明るくてちょっとやんちゃな女性を演じてきたが、そのイメージを払拭したのが1991年からフジテレビ系列で放送された月9ドラマ『101回目のプロポーズ』である。 本作で浅野さんは、これまでにない憂いを帯びた女性を演じている。浅野さん演じるチェロ奏者の薫は、3年前に大切な婚約者を事故で失っていた。そのショックを引きずりながら、母親の強引なお見合いで冴えない中年男性の達郎(武田鉄矢さん)と出会う……というものだ。 これまでトレンディドラマに出ていた浅野さんの役はコミカルなシーンも多く、ときに大喧嘩をしてその場をハチャメチャにするシーンなども見られた。その印象は1986年から長きにわたって放送されていた、日本テレビの『あぶない刑事』の真山薫役の影響も大きかっただろう。 しかし『101回目のプロポーズ』で演じた薫は真逆であった。過去の恋人を忘れられない薫は、達郎とのデートでも暗い印象で影があり、真剣に話し合うときはいつも涙を流している印象があった。 「僕は死にましぇん!」のセリフが流行語大賞にも選ばれた本作は、最高視聴率36.7%を記録し社会現象にもなっている。本作がここまで注目された理由の1つには、浅野さんが演じたこれまでにないアンニュイな女性の役どころもあったように感じる。
■クールな女性刑事を見事に演じた『沙粧妙子ー最後の事件ー』
最後に紹介したいのは、1995年7月よりフジテレビ系列で放送された『沙粧妙子ー最後の事件ー』だ。本作で浅野さんは捜査一課に属するクールな女刑事を演じている。本作は元科捜研に所属しており、プロファイラーとしての実績もある妙子が、連続猟奇殺人をめぐり活躍していく刑事ドラマである。 それまでの刑事ドラマといえば、圧倒的に男性を主役にしたドラマが多かったように思う。90年代は水谷豊さんらが主演で人気を博した『刑事貴族』や、柴田恭兵さん主演の『はみだし刑事情熱系』など、情熱を抱えた熱き男性刑事たちの活躍を描く作品が目立っていた。 しかし『沙粧妙子ー最後の事件ー』は、それまでに少なかった女性刑事を主役に据えた物語だった。浅野さんが演じた妙子は警察組織のなかで孤立した一匹狼のような存在で、口数も少なく、相手を斜め上から見据えるような目線で接する。そんな彼女の姿は“孤高の女刑事”としての魅力を存分に発揮しており、ほかの刑事ドラマとは一線を画していた。 筆者はこのドラマを見るまで、刑事といえば屈強な男性ばかりをイメージしていた。だが本作で、“実は女性刑事というものも存在するのか”と驚いた印象がある。この作品を皮切りに、日本のドラマではクールな女性刑事が活躍する作品が増えていったように思う。 トレンディドラマをはじめ、数多くの作品で活躍した浅野温子さん。とくに浅野さんは、女性からの支持を得てきた印象がある。その理由の一つは、彼女が視聴者から嫌われがちな“ぶりっこ”なキャラクターとはまったく違う印象があるからだろう。 浅野さんはくったくのない笑顔でキャラクターを演じ、時には豪快に酔っ払い、男勝りの大立ち回りを見せることもあった。その姿に、多くの女性視聴者が「こんなキレイで強い女性になりたい」と憧れたのだ。 現在浅野さんは60代に突入しているが、その美しさも演技力も健在である。今年5月に公開された『帰ってきた あぶない刑事』でも変わらぬ薫の姿を披露し、話題を呼んだ。これからも彼女のさらなる活躍に期待が高まる。
でかいペンギン