ピクセルリマスター版『FF1』レビュー。長い時を経てデスマシーンとついに対面。RPGのお手本ともいえるクオリティーに感心しつつ俺のガントレットが再び唸る!
『ファイナルファンタジー』(以下、『FF』)の第1作から『VI』までの6作を、グラフィックを一新して移植した『FF ピクセルリマスター』。本稿では、第1作となるピクセルリマスター版『FFI』のプレイレビューをお届けする。 【記事の画像(29枚)を見る】 ※本記事にはネタバレ要素がありますので、ご注意ください。 あの時代としてはオーパーツレベルと言っても過言ではないほどに完成されたRPGとしてのクオリティー、ガントレットといやしの兜の入手後に激変するゲームバランス、コウモリの邪魔さ、会えないデスマシーン……。過去の記憶を思い出しながらもサクサクとプレイできる本作は、忙しい働き世代でも気軽にプレイできる内容! 当時はできなかったプレイに勤しむのも、ありありです。 オリジナル版の発売当時にリアルタイムにプレイしていたオジサンライターが、過去を振り返りつつゲームの魅力をご紹介します。 『FF ピクセルリマスター』シリーズ紹介 『FF ピクセルリマスター』シリーズは、オリジナル版のドット絵を現代風にリファインし、さまざまなシステムに改修を行って現世代機に移植したタイトル。 『FFI』~『FFVI』の6タイトルともにファミコンとスーパーファミコンで発売されたオリジナル版の内容がベースとなっており、キャラクターやモンスターのドット絵、背景、攻撃や魔法などのエフェクトなど、すべてのグラフィックが現代クオリティーに一新されている。 BGMはオリジナル版の作曲を手掛けた植松伸夫氏が全曲監修を務めるアレンジ版が収録されているほか、オリジナル版にいつでも変更できるのがポイント。アレンジ版で楽しみつつ、印象深いBGMが流れるシーンではオリジナル版に切り換えたりと、2種類のBGMを自由に変更して楽しむことも可能だ。 ※Nintendo Switch、PS4、Steam版のみの対応で、スマホ版は非対応 そのほか、ゲームを快適にプレイするための便利システムの追加搭載も見逃せない。バトル終了後に手に入る経験値やゴールドなどの倍率を任意に増減できるブースト機能や、敵とのエンカウントをオンオフできる機能、移動速度をアップする機能、バトルスピートをアップしつつ自動でコマンドを入力させるオートバトル機能などが用意されている。 上記機能を利用すれば、ゲームを非常にサクサク進められる。「改めてプレイしたいけど、もう一度イチからやるだけの時間は……」という人は、この機能を利用して育成などはサクっと行い、ストーリーだけを追体験するといった遊びかたもできるわけだ。 『FFII』の熟練度や『FFVI』の魔法修得値などの獲得倍率も、しっかりと変更できる。 『FF ピクセルリマスター』シリーズは、スマホ(iOS/Android)/Steam版が2021年に、Nintendo Switch/プレイステーション4(PS4)が2023年に発売。 エンカウントのオンオフや経験値とギルのブースト機能といった一部機能はNintendo Switch/PS4版から追加されたもので、後日のアップデートによって、スマホ/Steam版にもエンカウントのオンオフ、ブースト機能が追加された。 ちなみに経験値やギルのブーストは2倍、4倍といった増加に加え、0.5倍、0倍とあえて減らすこともできる。これは低レベルクリアーなどを目指したい人向けの機能。オリジナル版では難しかったやり込みに挑戦するチャンスでもあるわけだ。 さらに、Nintendo Switch、PS4、Steam版のみ、オリジナル版のイメージに近いピクセルフォント(ドットのようなフォント)やオリジナル版BGMへの切り換え機能を実装。スマホ版の追加要素としては、ゲームパッドでプレイできる機能が加わっている。 細部は異なるが、基本的なゲーム内容やお助け機能は共通なので、好きなハードのものを購入していいだろう。 『FF ピクセルリマスター』注目機能一覧(一部) ダッシュ機能:通常時の移動速度がアップできる機能。作品によっては“ダッシュ”や“ダッシューズ”をセットするとさらに加速エンカウントのオンオフ:オンにすればボスやイベント戦闘以外のエンカウントバトルが発生しなくなる(一部例外あり)ブースト機能:経験値やゴールドなどの獲得倍率を0倍、0.5倍、1倍、2倍、4倍から選択できるオートバトル:前回入力したコマンドを自動入力させつつ、バトルスピードをアップさせる機能ピクセルフォント:オリジナル版のフォントと、今回用に作成されたピクセルフォントを好きなタイミングで切り換えられるBGM切り換え機能:オリジナル版とアレンジ版のBGMを好きなタイミングで切り換えられるマップ機能:好きなタイミングで世界地図や街・ダンジョンのマップを確認できる。そのマップで獲得できる宝箱や隠されたアイテムも表示されるモンスター図鑑:バトルで出会ったモンスターの詳細データが確認できるサウンドプレイヤー:その作品に登場するBGMが聴ける機能イラストギャラリー:設定資料などのイラストがチェックできる。天野喜孝氏監修オートセーブ:画面が切り換わったタイミングなどでオートセーブが行われるように。バトルで全滅した場合、そこから再開できる。ちなみにセーブデータの個数は各タイトル最大20個まで 初代と思えない完成度。クラスチェンジしたあたりが一番楽しい! 『FFI』といえば、1987年に発売したファミコン用ソフト。『FF ピクセルリマスター』はオリジナル版のゲーム内容を忠実に再現しているということもあり、いろいろと遊びやすくなっているものの楽しさは当時のまま。いまプレイすると、そのRPGとしての完成度に驚かされます。 ゲーム開始後、しばらくしてから「探求の旅は始まった」とオープニングが挿入されるような物語を盛り上げる映画的演出も、当時はかなり珍しい内容でした。ファミコンでこんなことができたのか、と当時は気にもしませんでしたが、いま考えるとかなりオーパーツ的な出来栄えですね。 新しい町にたどり着く>情報を収集する>装備を整える>レベルを上げる>ダンジョンを攻略する……というプレイサイクルがすでに確立されており、フラグ管理がキッチリしているので、ストーリー進行で迷うことがありません。 まだ用事がない場所では何も発生しないので迷いにくい。 シリーズ第1作であるのにもかかわらず、RPGとしてこれだけの完成度を誇っていることのスゴさというのは、恐らく子どものころには気づかなかったと思います。大人になったいまプレイしたからこそ、味わえた感覚でしょうか。 情報を与えてくれるキャラクターも丁寧に配置されている。 また、RPGでは乗り物が新しく手に入ったときなど、行動範囲が一気に広がるあたりがすごく楽しいですよね。 『FFI』には船や飛空艇が登場しますが、ストーリーの本筋とは関係ない寄り道ポイントもしっかり用意されています。そこに強い装備などが置いてあるなど、探索を楽しんでほしいという開発者のおもてなしの心が感じられてグッドです。 ちなみに、『FFI』で飛空艇が手に入るのはマリリスを倒したあとになりますが、情報を知っていればマリリス撃破前に飛空艇を手に入れることも可能なんですよね。 飛空艇を手に入れればクラスチェンジも可能になるので、寄り道がもっとも楽しくなるポイントですね。寄り道のしすぎでレベルが上がりすぎて、マリリスを倒すのが簡単になりすぎるのもお約束だったり? 等身アップで大人な雰囲気。なんか急に雰囲気変わった? また、『FF』シリーズといえば、のちに発売されるシリーズ関連作品にキャラクターや名称がスピンオフするファンサービスでも有名ですよね。 PSPやアーケードで登場した対戦アクションの『ディシディア ファイナルファンタジー』にシリーズの各作品からキャラクターが登場して話題となりましたが、原作を知らないのでどんなキャラクターかわからなかったという人も多いのでは? もし先に『ディシディア ファイナルファンタジー』を遊んでいて、今回『FFI』が初体験という人ならば、きっと“ウォーリア・オブ・ライト”のアレコレを思い出して、「これが元ネタか!」と気づくこともあるはず。もちろん思い出補正がなく、いま初めてプレイしたとしても十二分に楽しめる内容なので、若い『FF』ファンの方にも楽しんでいただきたいところです。 宿敵ガーランドや『FFXIV』に登場するマトーヤの原点は本作。 リッチ、マリリス、クラーケン、ティアマットといった四天王の要素も第1作から。『FFIX』に登場する四属性のガーディアンもこの四天王が元ネタですね。 シリーズ恒例キャラクターのシドは名前だけ登場。ちなみに、これは移植作から入ったもので、ファミコン版にはありませんでした。 オートバトルで、たたかう、たたかう、ガントレット、いやしの杖 『FFI』の思い出といえば、自分的には使うと魔法の効果があるアイテムの存在が印象深いんです。 出ました! 『FF』のある意味での最強アイテム(個人的に)“ガントレット”です。 このガントレットは、バトル中に使用するとサンダラの効果があるという優れもの。しかも使ってもなくならない! 魔法職はザコ戦ではMP節約をすることも多いですが、これが手に入ればサンダラが使い放題になるのが強力でした。一気に火力アップ。 ちなみに、『FF』シリーズでは『FFI』と『FFIII』の魔法は各レベルごとに回数制になっていました。ひとつのレベルの回数が尽きても、ほかのレベルは使用できるのが特徴ですね。 また、このガントレットが手に入る試練の城では、同じくヒール(全体回復魔法)の効果がある“いやしの杖”も入手でき、パーティメンバーのうちふたりは毎ターン小手と杖を高く掲げるだけで敵を屠ることが可能に。この試練の城の前後でゲームバランスが激変するのも、『FFI』では懐かしい思い出です。 前述のとおり、『FF ピクセルリマスター』にはさまざまなお助け機能が搭載されており、それを活用するだけでサクサクゲームを攻略できるのが魅力。当時リアルタイムで『FFI』をプレイしていた人も働き盛りを迎え、ゲームをする時間が捻出できないという人も多いと思いますが、そんな人でもクリアーしやすくなっています。 とくに、獲得経験値とギルをアップさせられるブースト機能のおかげで、道中のエンカウントをこなすだけでレベルがガンガン上げられるのが非常に快適でした。 エンカウントをオフにできる機能もフル活用。本作はダンジョンに配置されている宝箱が非常に多いので、これをすべて回収するときにエンカウントをオフにしてプレイしていました。何度も書きますが、めっちゃ快適。 そのマップに出現するモンスターをすべて図鑑に登録したら、あとはエンカウントをオフにします。ブースト機能のおかげで育成の必要もなく、めっちゃサクサク。 神秘の鍵を入手したあとに宝箱回収の旅をする際も、エンカウントオフで快適な旅が楽しめます。 また、オートバトル機能の存在も非常に快適。前述したガントレットといやしの杖を使いつつ、ほかの物理攻撃職は通常攻撃を行わせれば、あとはオートバトルさせるだけでガンガン敵を倒せるのが快適すぎました。 ノーコストで敵全体に魔法を使いつつ、微量ではありますがHPを回復できる……。このプレイを覚えてしまうと、もう戻れません。危険。 もし『FFI』を初めてプレイする人の場合には、ブースト機能を使うとプレイが簡単になりすぎるので、あまりおすすめできないかも。コツコツとレベルアップする楽しさも味わってほしいところ。 デスマシーンに、あの人に会いたい オリジナル版をプレイしたときには、ひとつだけ本作でやり残したことがありました。それは、デスマシーンを倒すことです。 このデスマシーンは風のカオス、ティアマットの居城である浮遊城に出現するレアモンスターで、道中のザコ敵とは比べ物にならない強さを持っています。 こいつです。 当時はインターネットが普及していない時代だったのでゲームの攻略情報が少なく、「なんかレアなやつがいるらしい」程度の情報しかなく、なかば都市伝説となっていました。 せっかく改めてプレイするのだから、やっぱり会っておきたい。長い時を経て実現する感動の対面がそこには待っているはず。 このティアマットが待つ場所のひとつ前のエリアに出現するらしい。 レアなだけあり、出現率は低め。オートバトル機能があるとはいえ、なかなかにキビしい。ここではのちに控えるボス戦を台無しにしないため、ブースト機能はオフにしてレベルが上がりすぎないようにしながら挑戦しました。オンオフが気軽にできるのが非常に親切ですね。 とはいえ、まったく出現しないデスマシーン。 やばい。意外と出ない。移植版だから出現率がアップしていたりとかそういった慈悲があると思ったけど、そんなことはないらしい。硬派。 この原稿を書く時間が必要になるので、「諦めてそろそろ切り上げるか」と思ったつぎの瞬間!? でたああああ! これがレアモンスターのデスマシーン。当たり前だけどBGMが専用のものに切り換わることもなく、ぬるっと出てきたのでマジでビビりました。油断していたのでHPも減ってしまっていて、全滅しそうになったのは秘密。 専用技の“核攻撃”は高威力。 倒しても図鑑に登録されるくらいでとくに報酬はないですが、20年以上の時を経てのエンカウント(それもけっこう時間かかった)に、ちょっと感動しました。 こいつを倒せばあとは思い残すことはありません。ブースト機能をオフにしたとはいえ、稼ぎすぎてクリアー最適レベルをとっくに越してしまった最強パーティでゲームクリアーまで一直線です。 『FFI』では出しちゃいけないダメージを叩き出して世界に光を取り戻す! ストライ(攻撃力アップの魔法)は重ねがけできるようです。 ゲーム内容はけっこう覚えていたのでつぎにどこに行けばいいのかも迷うことがなく、さらにブースト機能やエンカウントのオンオフ、オートバトルのおかげで非常にサクサクプレイできました。 道中でダレそうな探索やレベル上げなどをお助け機能で完璧にフォローできるので、休日に一気にプレイしてもよいかもしれません。 いまプレイしてもしっかりと楽しめること間違いなし。コンパクトながら、RPGの魅力がギュっと詰まった本作は、まだプレイしたことがない人にも遊んでほしい! オリジナル版をプレイした人も、ガントレットを天高く掲げれば、若かりしころの思い出が蘇るはず。シリーズの原点であり、RPGの名作中の名作である本作。興味があれば、ぜひプレイしてみてください。 隠し要素のひとつである数字パズルも、もちろん搭載。プレイする方法は、オリジナル版にだいたい準拠。探してみてほしい。 「とくれせんたぼーび」は時代とともに変化しました。 リンクの墓は健在! ピクセルリマスター版『FF』シリーズレビューはこちら 『FF2 ピクセルリマスター』レビュー。あの個性的な育成システムもブーストでラクラク! 最強魔法アルテマも『ピクセルリマスター』版なら……!? ピクセルリマスター版『FF3』レビュー。ジョブの能力が調整され多彩なジョブが活躍。オートセーブ・中断でクリスタルタワーも怖くない! 『FF4 ピクセルリマスター』レビュー。カインの気持ちも大人になったいまならよくわかる……。都市伝説だったアダマンアーマーにもいま会いにいきます