[MOM4701]大宮U18MF山中大智(3年)_誰よりも走り、誰よりも戦い、誰よりも頑張る。漢気のグラディエーターが志願のCB出場で完封勝利に貢献!
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ] [5.12 プレミアリーグEAST第6節 大宮U18 2-0 尚志高 埼スタ第2グラウンド] 【写真】松木玖生の衝撃スタッツにファン「こんなの初めて見た」「バケモン」「GKもしてた?」 このチームで生き抜いていくために、絶対に譲れない信念がある。誰よりも走る。誰よりも戦う。そして、誰よりも頑張る。基本中の基本かもしれないけれど、それを全力でやり切ることが、自分の成長にとっても、このグループの成長にとっても、何より必要だと信じているから。 「今年は副キャプテンになったので、後輩を引っ張りながらチームの中心としてプレーしたいですし、経験だけはしてきているので、そこの部分を生かしてしっかりやっていけたらいいなと思います」。 大宮アルディージャU18(埼玉)を力強く支える、漢気のグラディエーター。MF山中大智(3年=クラブ与野出身)が90分間披露し続けた献身的なハイパフォーマンスが、苦しむチームへ大きな勝ち点3を引き寄せたことに疑いの余地はない。 それは志願の“コンバート”だった。今シーズンの大宮U18はDF酒井舜哉(2年)とDF中澤凜(1年)の下級生コンビがセンターバックを務めてきたものの、なかなか失点を止め切れない試合が続いていた。彼らの奮闘は認めつつ、山中はあるタイミングで丹野友輔監督の元を訪れる。「チームとして苦しい状況だったので、本職ではないんですけど、自分から『チームが勝てるならセンターバックをやります』ということを監督に伝えました」。 2連敗で迎えたプレミアリーグEAST第6節の尚志高(福島)戦。中澤がコンディション不良もあって欠場を余儀なくされた一戦で、指揮官は山中をセンターバックとしてピッチへ送り出す。 いつもとは違う役割。いつもとは違う視界。ただ、もちろん準備は万全に整えてきた。「今日は自分がボランチをやっている時に、センターバックにやってほしかったことをやりました。ラインの上げ下げだったりとか、みんなでプレッシャーに行った時に付いていくとか、そういうことを意識しました」。できることを丁寧に、確実に、最終ラインでこなしていく。 前半終了間際に1点を先制し、後半12分に追加点も記録したものの、以降はロングスローも含めて押し込まれる展開に。それでも「後半は苦しい時間帯が続いたんですけど、自分たちは失点したら一気に連続失点することが多かったので、『絶対に失点はしないように』と全員で声を掛け合うことは意識しました」という“急造センターバック”を中心に、大宮U18の守備陣は相手のアタックを粘り強く凌いでいく。 そんな山中と尚志のFW矢崎レイス(3年)が再三に渡って繰り広げたマッチアップは、このゲームのハイライトの1つだったと言っていいだろう。お互いにフィジカルの強さに特徴を持つ両者は、ことあるごとに身体をぶつけ合い、ボールを奪い合う。 「9番(矢崎)は身体が強くてメチャメチャ嫌な選手で、前からの寄せも速いですし、フィジカルもありますし、結構脅威でしたね。その中でも冷静に対応できたんじゃないかなと感じています」(山中)。 試合終盤。矢崎が決定的なシュートを放つも、そこに飛び込んだのは山中。身体でボールを弾き出すと、思わず両手でガッツポーズを作る。「アレは結局自分のミスから始まったので、責任を取りました」。執念のシュートブロックもあって、試合はそのまま2-0で終了。オレンジの歓喜がピッチに弾けた。 指揮官も山中への賞賛を惜しまない。「1年生の中澤凜もここまでよく頑張っていたんですけど、やはり山中大智がセンターバックに入ったことによって、凄く安定感が増したところがあって、彼が安定している分、周りが凄く自信を持ってプレーできるというところがありました。彼は自己犠牲ができる選手で、チームが勝てていない状況で快くあのポジションを引き受けてくれて、それはこのゲームをゼロに抑えた要因の中でも非常に大きいのかなと思います」。 ただ、本人が口にした言葉が頼もしい。「結果を見たらクリーンシートだったので、そこは良かったのかなと思うんですけど、内容を見たらまだまだだったのかなと。自分の理想が高いのかわからないですけど、もっとできるんじゃないかなとは感じます」。これぐらいで満足するわけにはいかない。守備者として携えている矜持が逞しく滲んだ。 中学時代はクラブ与野でプレーしていた山中は、U-18年代から大宮へと加入。当初は周囲の上手さに驚きながらも、その中で自身のやるべきことを明確に捉えていったそうだ。 「みんな上手かったので、『頑張るしかないな』と思いましたし、献身的なプレーも含めて『基本中の基本をやろうかな』という部分はずっとありますね。自分は下手だったので、走るとか、頑張るとか、戦うとか、そういうことを頑張ってきたので、そこは他の選手との違いなんじゃないかなと思います」。 1年時はリーグ戦終盤で定位置を掴むと、結果的に9試合に出場してチームのプレミア残留に貢献。2年生に進級した昨シーズンは、チームでただ1人だけリーグ戦全22試合でスタメンを張り続け、オレンジ軍団の絶対的な主力選手へと成長を遂げた。 今季は副キャプテンも任されており、よりチームを牽引するための自覚も芽生えているという。この日は良い形で勝利を収めたが、まだまだ自分たちはこんなものではないはずだ。「ちょっとずつですけど成長はしてきていると思います。でも、監督も言っているんですけど、その成長のスピードを上げていくという部分は求められると思うので、ここから勢いに乗って、また来週の練習からしっかりやっていきたいなと思っています」。 「ここは環境も整っているので、本当に『自分次第でどうにでもなるな』と実感していますし、やっぱり『アルディージャに来て良かったな』と感じています。だからこそ、結果を残したいですね。あとから後悔したくないので、悔いのないようにみんなで戦っていきたいです」。 誰よりも走る。誰よりも戦う。そして、誰よりも頑張る。基本中の基本を過不足なくやり切れる、大宮U18の雄々しき護り人。山中大智が備えている献身性と、纏っている信頼感は、このチームにとって絶対に欠かせない。 (取材・文 土屋雅史)