センバツ甲子園 しまれ、がんばれ、ねばれ、おしきれ 舞鶴魂、伸び伸び発揮 /大分
第94回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)第1日の19日、21世紀枠の大分舞鶴は開幕試合で浦和学院(埼玉)と対戦した。主戦の奥本(3年)が粘り強い投球をして相手強力打線を抑えたものの中盤に得点を許し、勝利することはできなかった。春夏通じて初の甲子園だったが「しまれ、がんばれ、ねばれ、おしきれ」の舞鶴魂で伸び伸びとプレーする選手たちにアルプススタンドから惜しみない拍手が送られた。【辻本知大、隈元悠太、山口敬人】 創部71年目でつかんだ雄姿を一目見ようと、スタンドには、在校生や野球部OB、同窓生など約1600人が集まった。柏井幸憲・野球部OB会長は「感無量で涙が出てきます」と目を細めた。 序盤は、力のある直球を投げる奥本と相手投手の投げ合いになった。スタンドで見守った父・貴行さん(49)は「落ち着いて投げている。仲間を信じて投げきってほしい」と我が子を見守った。 奥本の好投に野手陣も応えた。一回裏1死一塁、都甲(3年)が二飛を捕らえ、飛び出した一塁走者もアウトにした。三回裏には捕手の青柳(3年)が矢のような送球で盗塁を阻止し、球場を沸かせた。 スタンドで応援していた野球部の石井諒太さん(3年)は「みんな冷静に守っていて心強い」と話した。 青柳は3点を奪われた直後の五回表1死、チーム2本目となる左前打を放った。「狙っていた真っすぐ。うれしかった」と振り返った。奥本は五回裏にも1点を奪われたもののその後も粘りの投球を見せた。 野球部の前主将、衛藤晃太さん(18)は「粘りが強みのチーム。九回2死でもひっくり返せる力がある」と勝利を願ったが、その思いは届かなかった。 甲斐浩司・保護者会長は「敗れたのは残念ですが、(奥本)翼は良く投げていて、みんな声が出ていた。夏の甲子園に帰ってきてほしい」と選手たちの健闘をたたえた。 ◇スタンド惜しみない拍手 アルプス席では、他の運動部員ら有志でつくる臨時応援団がエールを送った。新型コロナウイルスの感染対策で声を出した応援はできなかったが、吹奏楽部の演奏に合わせて振り付けをして、在校生の応援をリードした。 中心になったのは、花園常連校として知られるラグビー部員だ。ラグビー部と野球部はそれぞれの大会で応援し合うのが伝統だ。 男子の応援団長を務めたラグビー部員、帯山健さん(3年)は「青柳や甲斐はクラスメート。誰もが夢見る甲子園でのプレーが見られて感慨深い」と話した。 試合には敗れてしまったものの「ここまで連れてきてくれてありがとうと言いたい。また野球部とラグビー部で切磋琢磨(せっさたくま)して成長したい」と話した。 ……………………………………………………………………………………………………… ■青春譜 ◇たくさんの応援に感動 大分舞鶴・甲斐京司朗主将(3年) 七回、打席に立ち、追い込まれた後の落ちる変化球をフルスイングしたが、三振に倒れて悔しそうな表情を浮かべた。 物おじしない明るい性格。部員からの信頼は厚く、新チームでは満場一致で主将に選ばれた。チームで一番大きな声を出し、ベンチプレスで最大105キロのバーベルを持ち上げるパワーで4番も任された。勝負強い打撃とチームでもトップクラスの飛距離を誇り、秋の公式戦は7試合で5打点を挙げた。 その結果、チームは2021年秋の県大会で準優勝。九州地区大会では準優勝の大島(鹿児島)と引き分け再試合を演じるなど活躍し、春夏通じて初のセンバツ出場に貢献した。 この日も何度かあったピンチの場面で、チームの士気が落ちないように人一倍の声を出して盛り上げた。相手投手の速球に振り負けないよう、スイングを見直すなど対策もとって臨んだが、期待に応えられなかった。 試合後には、チームを代表して報道陣の取材に応じ、「相手の力が一枚上だった。たくさんの人たちに応援してもらえたことに感動した。チームで力を合わせて夏もこの舞台に戻りたいと強く思った」と声を弾ませた。【辻本知大】