セブン-イレブンの店舗では、なぜ必要なタイミングで必要な量の商品が適切に並ぶのか?
今やわれわれの生活に欠かせない存在と言える「コンビニ」。欧米の小売業界とは異なり、ライフスタイルや社会構造の変化を背景に急成長を遂げてきた日本のコンビニ業界は、他国に類を見ない特徴的なイノベーターと言っても過言ではない。本連載では『コンビニがわかれば現代社会のビジネスが見えてくる―日本的小売業のイノベーター』(塩見英治著/創成社新書)から、内容の一部を抜粋・再編集。業界特有の経営戦略をはじめ、近年進む食品ロス対策の取り組みなど、コンビニ市場を取り巻く最新動向を探る。 第3回は、コンビニが小売業に革新をもたらした最たる領域と言える「情報」と「ロジスティクス」に着目。セブン-イレブンの事例を基に、店舗空間を効率的に運用するための情報システムや物流体制の特徴を見ていく。 ■ 情報システムとロジスティクスシステムの重要性 コンビニの小売業としての革新は、コンビニの組織、立地戦略、商品管理、情報とロジスティクスの変革に負うところが多いが、最も影響を与えているのが、情報とロジスティクスである。 これらの先導はセブン・イレブンで、1980年以降の取り組みで、2000年以降は一般化している。代表的なものは、物流基盤と情報ネットワークの整備である。とくに、物流拠点の整備と配送の効率化、POSシステムと温度別管理、共同配送は、大きな影響を与えた。最近は、デジタルの進展につれ、電子商取引やDXへの取り組みが大きな影響を与えている。これらの動向と課題について、考察してみよう。 販売時点の即時情報を最も先進的に取り入れているのが、コンビニである。コンビニは、他の小売業態に比べて、店舗ネットワークをいかすため、最先端のロジスティクス・システム、情報システムの基盤を常に整備してきた。最先端の情報システムとロジスティクス・システムの導入が店舗ネットワークの急拡大を可能にしたといえる。 POSシステムによる単品管理をいち早く導入し、極力少ない在庫で、在庫切れによる販売機会を逃さない。店頭での販売時点での管理を徹底的に行い、売れ筋商品を前提に確実に品揃えする商品管理を徹底させ、商品群の特性に応じて多頻度、少頻度を組み合わせた計画配送などを実現している。各店舗が発注した情報は、本部のホストコンピュータを通じて、供給業者に伝達される。 この販売と在庫情報をもとに、商品は供給業者から共同配送センターを経由して、各店舗に納品されることとなる。この一連の動きが機能することによって、コンビニのロジスティクスの効率化が成立している。顧客の買い物行動をとらえる情報による即応性ニーズと実需の把握が肝要である。 コンビニは、限られた店舗空間の中で基本的に過剰在庫を抱えず、在庫のバックヤードもない。商品の種類は約3000弱と他の業態に比べると少ないものの、食料品、日用雑貨、惣菜・弁当等と多品種にわたっている。そのため、取引を集約し、取引コストを削減することが進められた。 取引供給業者がばらばらに納入した場合、車両数は膨大になる。供給業者数が集約化され、配送は専用の共同配送センターを設置のうえ、温度別管理で効率的に行われる。共同輸送の延長上に、温度別管理がある。 常温、5℃のチルド、20℃の米飯、マイナス20℃のフローズンの各温度帯別の品目の枠を超えた共同配送に取り組んできた。さらに5℃のチルド、20℃の米飯という違う温度帯の商品を1台で運んでいる。例えばセブン・イレブンの1日1店舗当たり配送車両数は、創業当時は100台近くあったが、2010年には10台弱で済んでいる。これは、環境負荷の軽減につながっている。こうしたロジスティクスの効率化が、現在普及している。