空前の円安でも苦戦、電子部品“反転”の次なる本命、中国とスマホは望み薄だが車載とAI関連は期待大
こうした背景もあり、2025年3月期は好調を見込む。村田製作所は営業利益3000億円(前期比39.2%増)、太陽誘電は200億円(同120.3%増)、TDKは1800億円(同4.1%増)の会社計画を掲げる。 ■民生向けは厳しさ脱せず 懸念されるのは家電など民生品の動向だ。村田製作所は電動工具向けリチウムイオン二次電池事業で在庫調整が長引き、前期に495億円の減損を計上。今期も数十億円の減損を見込む。
中国市場の動向も焦点となる。設備投資需要が伸び悩み、産業機器向け部品の需要が低迷している。太陽誘電は2024年度下期から回復すると見通すが、TDKの齋藤社長は「産業機器市場におけるFA機器全般の生産台数は回復の兆しが見えず、年間を通して弱含むと見込んでいる」と語る。 TDKは売上高の約50%を小型品を中心とした二次電池が占め、世界シェアトップだ。バッテリーとして使われるため、価格帯を問わずスマホには必須の部品となっている。民需の弱さから高級機種が売れにくくなり、先端品のコンデンサーなどが悪影響を受ける中でも、比較的堅調に推移した。
またTDKのコンデンサーは、自動車向けの高性能・高単価品が中心。顧客は安全性への配慮から簡単には廉価品へ切り替えられない。中国のEV関連部品で価格競争が激化し、モーター世界大手のニデックが駆動部品で部門赤字となる中でも、TDKは健闘している。 主戦場だったスマートフォン向けも低迷が続く。村田製作所によると2024年度の世界スマホ販売台数(部品取り込みベース)は、前年度比3%増の11.8億台が見込まれる。ピークだった2016年度の15.6億台には遠く及ばず、かつて電子部品業界の成長を牽引した勢いはない。
近年はiPhoneをはじめとするハイエンド品の価格が上昇傾向にあり、消費者の買い替えサイクルが長期化したのが原因だ。カメラなどの局所的な性能はモデルチェンジごとに良化しているものの、日常的な使用には旧式でも十分な機能を備えていることが、この傾向を後押しする。 さらにアメリカが半導体関連の輸出規制を強化した2020年、中国市場で隆盛していたスマホ大手ファーウェイが失速。ほかの地元メーカーが空いたシェアを奪おうと増産体制を整えたが、結局はAppleやサムスン電子に敗北し、大量の在庫を抱える羽目になった。