被災者の孤立解消へ注力 能登地震を語り継ぐ【山口】
山大学術研究員の網木さん、珠洲で活動
元日の大地震の爪痕もいまだ残る中、9月21~22日に襲った記録的な大雨により14人が死亡し、多くの家屋が浸水するなど二重に被災した能登半島。豪雨前の10~19日に石川県珠洲市で活動した山口大大学院創成科学研究科同大地域レジリエンス研究センター学術研究員、網木政江さん(55)に現地の状況を尋ねた。
大雨で厳しい状況、再び現地へ
網木さんは、熊本地震、東日本大震災、九州豪雨災害、山口県内の災害でも看護師として救護活動を行ってきた。能登地震では、日本災害看護学会の能登半島地震看護プロジェクトの一員として、1、3、7月にも現地で支援を行ってきた。 復旧が遅れている面はあるものの、仮設住宅も着実にでき、解体が進んで更地も見られるようになった。地域によって差はあるが、少しずつ復興が進んでいると感じたという。 活動は、応急仮設住宅や避難所を訪れ、被災者の健康状態や困り事を把握。公費解体申請や義援金受け取りの手続きの手助け、IHコンロの使用方法の説明など生活の小さな変化まで、さまざまなことに対応した。 孤立の解消に向け仮設住宅の集会所で、お茶会と称して、健康相談やレクリエーションで交流も図った。15日には避難所となっている大谷小中学校の体育館でイベントを企画。健康相談や体力測定、料理、音楽を通じて、被災者のリフレッシュや交流に取り組んだ。 仮設住宅に移っても隣人の音が気になることや先祖代々の家を守りたい思いで、日中は半壊状態の自宅や納屋で過ごす被災者がいるという。「仮設住宅ができたから安心ではなく、住みにくさやさまざまな価値観があることにも目を向けないといけない」と指摘する。 地区の復興会議にも学会メンバーと参加し、今後、珠洲市に戻ってくる人も想定しながらどのように復興を進めていくかを検討した。災害復興住宅の区画や規模を今後の防災対策へつなげることも重要で「地元の要望をどうまとめていくかが難しい」と話す。 大雨により、同校体育館も浸水し、水道などのライフラインも途絶えたと聞く。「体調面はもちろん、当事者の精神状態が気がかり。発災直後の1月より、もしかすると状況は厳しいかもしれない」と推察する。今月14日から再び現地へ入って活動する。 珠洲市の人々から「地震のことが忘れられつつある」と言われたことに触れ「大雨による注目も薄れつつある。義援金といった支援も重要だが、関心を持ち続けてほしい」と訴えた。