岸田首相「トリガー条項」の凍結解除の検討を表明…政府のガソリン価格高騰対策が抱える問題点
岸田首相は11月22日、衆議院予算委員会で、ガソリン価格の高騰が続いているのを受け、ガソリン税の「トリガー条項」の凍結解除を検討する考えを示しました。実現すればガソリン税がガソリン1リットルあたり53.8円から28.7円に引き下げられます。これまで政府は「トリガー条項」の発動を否定してきましたが、なぜ、今になって凍結解除の動きが出てきたのか、現行の価格高騰対策の問題点に触れながら解説します。 【早見表】年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
ガソリン税の「トリガー条項」とは
ガソリン税の「トリガー条項」とは、3ヵ月連続で平均小売価格が1リットル160円を超えた場合に、ガソリン税の税率が1リットル53.8円から自動的に1リットル28.7円に引き下げられるという制度です。トリガー条項が発動すれば、ガソリン価格が1リットルあたり25.1円引き下げられることになります。 2010年に、ガソリン価格が急激に上昇した場合の措置として導入された制度です。しかし、これまでに一度も発動したことがないまま「凍結」された状態です。すなわち、2011年3月に東日本大震災が発生し、その復興財源を確保するための一環として、特別法によってトリガー条項が当面の間凍結することとされ、現在に至っているのです。 2023年11月現在、ガソリン1リットルあたりの価格には、以下の税金が含まれています。 【ガソリン1リットルあたりの価格に含まれる税金】 ・ガソリン税:53.8円(揮発油税48.6円、地方揮発油税5.2円) ・石油石炭税:2.04円 ・温暖化対策税:0.76円 資源エネルギー庁の給油所小売価格調査によると、2023年11月20日時点のガソリン価格は1リットル173.7円なので、うち32.7%をガソリン税等の税金が占めている計算です(それに加え、ガソリン価格全体に10%の消費税がかかります)。 もし、仮にトリガー条項が発動すれば、ガソリン価格が1リットルあたり25.1円引き下げられるので、この税金の比率を大きく引き下げる機能を果たすことになります。