朝青龍のおい、センバツの夢 明徳義塾留学、監督&技術者目指す
19日に兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で開幕した第93回選抜高校野球大会。第1日第2試合に登場した明徳義塾(高知)の野球部には、大相撲の元横綱・朝青龍のおいがいる。セルジブデ・サンダガバザル(3年)。チームメートから「サンダ」の愛称で呼ばれる外野手は今大会、メンバーから外れてアルプス席からの応援となったが、大きな夢を描いている。 2年ぶりに開催されたセンバツ。優勝候補の仙台育英(宮城)と対戦した1回戦で、「サンダ」は一塁側アルプス席からグラウンドの仲間に懸命に拍手を送り続けた。 優勝25回の名横綱だった朝青龍の兄にあたる父は、かつて新日本プロレスに所属したことがあり、野球好きだった。母国のモンゴルでは大相撲と違い、野球はメジャーなスポーツではないが、父の影響もあって動画サイトで日本のプロ野球や高校野球を見て育ち、「日本で野球がしたい」と思いを募らせた。叔父の朝青龍ら親戚が明徳義塾出身だった縁もあり、中学1年で来日し明徳義塾中に入学、野球部の門をたたいた。 だが、全国レベルの強豪だった野球部は、バットにボールが当たらないほどの初心者にとって甘い世界ではなかった。「叔父(朝青龍)からは『厳しいぞ』としか言われなかったが、想像以上に厳しかった」と、最初はホームシックにもなったという。 それでも夜に一人で素振りを繰り返すなど努力を重ね、同級生や先輩らに教わり、今では日本語も流ちょうに話す。「チームメートはみんな優しい。悪い部分は指摘してくれるし、いい部分は褒めてくれる」。人なつっこい性格が周囲から愛され、U18(18歳以下)高校日本代表監督を務める明徳義塾・馬淵史郎監督も「人間的にすごくいい子」と目を細める。 身長175センチ、体重75キロの鍛え抜いた体に親譲りのパワーが持ち味だが、今大会はメンバーから外れた。それでも「みんなと一緒にプレーするのが楽しい」と語り、「センバツでの目標は優勝」と仲間の活躍に期待する。 卒業後は日本の大学に進んで野球を続けるとともに、エンジニアになるための勉強がしたいという。将来は母国に戻ってエンジニアをしながら野球を広め、モンゴル代表監督になる夢も持っている。「モンゴルの子どもたちにも野球を教えたい」。聖地で見た高校野球が、未来への財産になる。【新井隆一、森野俊】