ちょっと注意したら不貞腐れるメンタル激弱部下に、子どもを叱るのはもう疲れたという妻…「叱れない大人」がぶち当たる本当の恐怖
メジャーリーグが開幕した。大谷翔平選手の結婚が話題を集めているが、マリナーズで会長付特別補佐兼インストラクターを務めるイチローさんが昨年11月初旬に旭川東高校で指導を行った際の発言は、大きな話題を呼んだ。危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏はこう話す。 「イチローさんは今の高校生たちが置かれている現状が酷だと表現しました。ここ数年、いわゆる昭和的な厳しい指導は、ハラスメントや体罰の対象となることも多く、もはや時代遅れの烙印を押されています。しかし、イチローさんはこれが必ずしもいい面だけだとは述べていないのです。というのも誰かが厳しく律してくれない以上、自分で律する必要があるからです。高校生のうちから自分に厳しくいられる人ももちろんいますが、そうでない人もいます。自分の意見が尊重されることと自己責任とは表裏一体ということでしょう」。 確かにこれは高校生だけでなく、会社でも見受けられる現象だ。 「イチローさんが危惧しているのは、自分で自分を律することができる人とそうでない人との格差です。一昔前であれば、自分で自分を律することができない人であっても厳しい指導の代償としてある程度のところまでは引き上げてもらえたけれど、今は自分でやらなければ上がって来れず、いわば置いてけぼりにされてしまうと言うのです。厳しい指導をしてくれる大人とは、もちろん横柄な人という意味ではありません。責任をとってくれる大人という意味です」。 そんな責任の取れる厳しい大人でいたいと思う反面、そうあることは非常に難しいとリアルに感じているある男性に話を聞くことができた。 ……………………………………………………………………………
高柳康太さん(仮名・52歳)は、都内の広告代理店に務める現役のクリエイティブディレクターだ。 「うちはいわゆる電通とかと違って、社員100人程度の小さい広告代理店です。30代まではもっとデカイ仕事をしたいと夢見て、今より大きい会社にいましたが、40歳のときに現実を見つめ直し、今の会社に転職しました」。 転職は正解だったと話す。 「確かにデカイ仕事はありませんが、今は広告は規模の大きさじゃないと思えるようになりました。クライアントの満足度をあげ、最終的なリーチに如何につなげることができるか、そういうことが大切だとやっと思えるようになりました。血反吐を吐きながら争い、頑張った20代、30代があったからこそ、そう思えると感じますね」。 そんな康太さんが最近、悩んでいるのが部下たちの扱いだという。 「3年前から役員になったので、自分の部署だけでなく、多くの部下たちと接していますが、本当にびっくりするぐらい、打たれ弱いんです。もちろん僕たちの時代のような働き方や指導方法は、今はできないことは重々承知しています。こんな小さい会社であってもハラスメント講習とかありますし、僕自身、子どもがいるので、なんて言うのかな、僕ら昭和生まれと令和生まれの意識の差についても、ある程度は理解しているつもりです」。 実際社会人の息子は「コスパ」より「タイパ」を重視し、キャリアには保守的だ。 「息子は出世よりも自分の時間を楽しみたいといいます。先日も残業の際に上司とすこし揉めたと妻から聞きました。翌日でも間に合う書類をその日に仕上げて欲しいと上司から打診があったそうで…。上司の方から見れば、おそらく手直しなどのことを考えてその日中にと思ったんでしょうけど、難しいですよね」。 康太さんは以前の自分なら「その日にやるべきだろ!」と息子に進言していたに違いないと話す。