最愛の妹がある日突然殺された…裁判終わっても続く苦しみ 賠償全額払わず受刑者は「逃げ得」のしかかる経済的負担…犯罪被害者遺族の厳しい現実
2021年、大阪・天満のカラオケパブで起きた殺人事件で当時25歳だった店主の女性が亡くなりました。女性の兄・稲田雄介さんはある日妹を突然失い悲しみに暮れる中、受刑者に命じられた賠償問題と向き合い続けています。犯罪被害者遺族の厳しい現実とは…。 【写真で見る】文字盤の数字ほとんど見えず…真優子さん愛用の腕時計
“自分の店を持つ”という目標を実らせ、大阪・天満でカラオケパブを経営していた稲田真優子さん(当時25)。決して裕福な家庭ではありませんでしたが、小さい頃から真優子さんの笑顔が家族を明るくさせていました。 2021年6月、大阪市北区でカラオケパブ「ごまちゃん」を経営していた稲田真優子さん(当時25)は店の常連客だった宮本浩志受刑者(58)に首や胸などを刃物で何度も突き刺され殺害されました。
遺品が物語る事件の凄惨さ…「痛かったやろうな、辛かったやろうなって」
事件で帰らぬ人となった妹が住んでいた部屋には現在、兄の雄介さんが管理しています。裁判が終わってから数か月後、検察から遺品の一部が返却されました。返却されたのは「亡くなった時に履いていた靴」「店にかかっていた暖簾」などですが、事件の凄惨さを物語るのが愛用していた「腕時計」です。時計には真優子さんの血が付いていて文字盤の数字はほとんど見えない状態です。 (稲田雄介さん)「(真優子さんに)父親がプレゼントした時計です。あまりべたべた触るとね、乾燥した血が手についてしまうんですよね。こういったものを見ると、どれだけひどい最期やったのかなと。痛かったやろうな、辛かったやろうなって、ヒシヒシと伝わってくるし、本当にかわいそうな最期やったんやろうなと改めて思いますね。突然の最期、突然の別れだったので、思い出はいくらあっても足りないですし、ちょっとでもあればやっぱりうれしい。まじまじと見ると、かわいそうやという気持ちもそうですし、どうしても…(宮本受刑者に対して)憎いなという気持ちが強いですね」
「ぜひとも死刑を下していただきたい」裁判で身勝手な主張に遺族苦しむ
突然起きた悲惨な事件。当時妹を失った悲しみに暮れる一方、1審・2審と続いた裁判期間中の宮本受刑者の言動に苦しめられていました。1審で宮本受刑者は「被害者遺族の意図をくむなら、ぜひとも死刑を下していただきたい」などと身勝手な主張を展開しました。 一方、裁判では真優子さんを殺害した動機を一切語りませんでした。そのため、雄介さんら家族は「真実を知りたい」と宮本受刑者に手紙を出しますが、返事には謝罪の言葉はありませんでした。 (宮本受刑者からの手紙より)「真優子さんに対しては今も感謝しております。もし今、彼女に贈る言葉としては『ありがとう』以外に思い浮かびません」