最愛の妹がある日突然殺された…裁判終わっても続く苦しみ 賠償全額払わず受刑者は「逃げ得」のしかかる経済的負担…犯罪被害者遺族の厳しい現実
受刑者に約3000万円の賠償命令…しかし「支払い2割もいかず」のしかかる経済的負担
心を踏みにじられた雄介さんら家族。さらに弁護士費用や店の後片付けの費用など経済的な負担がのしかかりました。雄介さんは宮本受刑者に対して「損害賠償命令制度」でやり場のない怒りへの償いを求めます。 損害賠償命令制度とは、刑事裁判の有罪判決後に行われます。その手続きに関与した裁判官のもとで命令が出されます。4回以内に結論を導くので民事裁判を起こすよりも早期に解決することができ、費用もおよそ一律2000円で行える制度です。 1審での有罪判決後、裁判所は宮本受刑者に対して約3000万円の損害賠償命令を下します。しかし…。 (稲田雄介さん)「(Q支払われた金額はどれくらい?)2割いってないですね。損害賠償命令とは名前だけで、全く強制力がないものと今回すごく痛感した。年金は差し押さえができないとか、例えば定期預金に関しては満期がくるまで2年先でも3年先でも待たないといけないとか、そういった抜け道がいっぱいあるんです」 差し押さえができない年金。支払うかはどうかは宮本受刑者の裁量に任されます。救いを求めたはずの制度ですがその実態に納得できませんでした。
「これが妹かなと思うぐらいの最期」「加害者は逃げ得。制度は絵に描いた餅」
雄介さんはこうした現状を何とか打開するべく事件・事故の遺族らで作られる「犯罪被害補償を求める会」に参加し、去年10月シンポジウムで登壇しました。まずは事件で亡くなった妹の最期の様子について話しました。 (稲田雄介さん) 「生活が苦しい中で、両親を幸せにしたい、夢と希望をもって生きていましたが、店を持つという夢を実現して5か月後に常連客に殺害されました。(妹は)ただ刺されただけじゃなく髪の毛も半分ぐらい引っ張りぬかれて顔も暴行されて腫れ上がってこれが妹なんかなと疑うぐらいの最期でした」 そして、受刑者から賠償金が全額支払われていない現状について不満を訴えます。 (稲田雄介さん)「実態はやはり加害者は逃げ得だなとすごく感じまして、本当に損害賠償もらってよかったねと誤解される部分もあるかもしれないですけど、実際ふたを開けるとそうではない。強制力がありそうな損害賠償命令、強制力を持ってしっかりと差し押さえとか、払ってもらうことができるだろうと思っていたが…。(損害賠償命令制度は)絵に描いた餅」 こうした賠償問題と向き合う思う中、事件で大切な人を失い精神的にも辛い状況を次のように話しました。 (稲田雄介さん)「生活に追われること、(賠償手続きで)時間に追いかけられてしまうことで、故人に思いをはせる時間もなければ悲しむ時間もないわけですよ。大事な人を突然命が奪われてしまった人たちがいる、犯人に何か求めても救いはない、この立場になってわかるのはこういう思いを他の方には絶対にしてほしくない。補償が必要かなと思いました」 家族を失った悲しみと経済的負担。遺族らは制度の見直しを求めています。