『若草物語』堀田真由の主張が幼すぎて「心への響き」ゼロ…恋愛ドラマの予告編だけ観て酷評するようなモヤモヤ
「価値観の多様性」を訴えている主人公自身が、ぜんぜん「価値観の多様性」をわかっちゃいない気がする。 【写真あり】『若草物語』は何位?がっかりした「10月ドラマ」ランキング 堀田真由主演で11月10日(日)に第5話が放送された『若草物語―恋する姉妹と恋せぬ私―』(日本テレビ系)のことだ。 アメリカの小説『若草物語』を原作としつつ、令和の日本を舞台に斬新なアレンジを加えたドラマである。 ■恋愛至上主義を毛嫌いする主人公 公式サイトには《2024年。果たして幸せに恋愛は必要か? きまじめ長女、がむしゃら次女、おっとり三女、したたか四女。四者四様の幸せを追いかける社会派シスターフッドコメディー》と謳われており、四姉妹それぞれの恋愛・仕事・人間関係の問題が描かれる。 堀田が演じる主人公は、脚本家見習いの次女・涼。口が達者で、勝気、自立心が強い、お世辞を言わない、作り笑いはしないというタイプ。 涼は恋も結婚もしないと誓っており、恋愛はたくさんしたほうがいいとか、女は結婚したほうが幸せになれるとか、そういった恋愛至上主義的な価値観を毛嫌いしている。 自身がマイノリティ(少数派)であることを自覚しており、マジョリティ(多数派)からさんざん「恋愛や結婚は素晴らしい」という価値観を押しつけられてきたため、とくに反発心が強い。 主人公は、価値観は多様であるべきと思い込んでいるが、当の本人に、マジョリティの価値観を認めないような言動が散見されるのだ。 たとえば、周囲の誰かが恋愛至上主義的な発言をすると、別に押しつけられたわけでもないのに、あからさまにウンザリしたり、さげすんだりする。 ■母親の価値観を全否定する幼稚さ とくにひどかったのが、第4話で登場した母親に言い放った言葉だ。 「ママみたいに男がいないと生きていけない、みじめな生き方は、私は一番イヤ!」 母親は4度の離婚経験がある自由奔放な超恋愛体質で、5度めの結婚予定の男に貢ぐため、娘のお金を盗んでまた消えていくような人物なので、そんな毒親を責め立てたい気持ちはわからなくもない。 しかし、「男がいないと生きていけない」ことを「みじめな生き方」と断ずるのは、明らかに他者の価値観の否定だ。常に愛する異性と一緒にいることを最優先にした人生を、涼は認めないのである。 たしかにこれまで「恋愛・結婚はしたほうが幸せ」という決めつけに苦しんできたのだろうが、逆に「男に依存して生きるのはみじめ」と決めつけていることになる。 要するに涼は、自分が抱える少数派の価値観も認められたいだけの人物。価値観は多様であるべきという大義名分を振りかざしてはいるが、実際は自身も他者の価値観を否定しているのだ。 ■恋愛の初歩的な話もわかっていない 第5話では、涼と四女(畑芽育)が、恋愛の “機微” について口論になるシーンがあった。 「恋愛っていうのは、ハッピーとか胸キュンとかそういうのばっかじゃなくて、楽しいだけじゃなくて苦しくて、気持ちをコントロールできないっていうか、その人のことで頭いっぱいになっちゃって、自分らしくない行動しちゃって、そういう自分がイヤになって。でも、同じところでぐるぐるしちゃったりすんの。そういうのが “機微” なの!」 四女がこう一気にまくし立てるものの、恋愛経験がほぼない涼はいまいちピンと来てない様子。四女の語る恋愛論はごくごくまっとうというか常識レベルの話だが、涼はそんな恋愛の初歩さえもわかっちゃいないのである。 恋愛経験がない(少ない)人が恋愛を不要とする価値観を持つことがいけないわけではないが、そんな入門編みたいなことさえ理解してない主人公に恋愛を否定されても、説得力に欠けるばかりで、かなりモヤモヤしてしまう。 たとえるなら、涼のやっているのは、恋愛ドラマの短い予告編だけ観て酷評しているようなものだろう。結局、涼の主張(=作品の主張)はぜんぜん芯を食っておらず、こちらの心への「響き」がゼロなのである。 今夜の放送は第6話。物語も後半に突入するので、主人公の矛盾やブレがなくなり、「価値観の多様性」を認めてほしいという訴えが、もっと響いてくることに期待したい。 ●堺屋大地 恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『現代ビジネス』『集英社オンライン』『日刊SPA!』などに寄稿中
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