「もっと締めないといけない」アマの人間にこんなことを言われたら、プロの恥である/廣岡達朗コラム
やるべきことをやれば勝てる
巨人の坂本勇人が沖縄での自主トレで、ソフトボールの元日本代表監督、宇津木妙子氏のノックを受けてヘロヘロになったという。最初は三塁に始まり遊撃、二塁、一塁とポジションを移動しながらゴロを捕球し、ダイヤモンドを一周。坂本は「女子のソフトの選手は倍やっていると。考えられない。めちゃくちゃ疲れました」とこぼしていた。 【選手データ】オコエ瑠偉 プロフィール・通算成績 自主トレに同行したオコエ瑠偉は宇津木氏から「おなかが出ているから、彼は。もっと締めないといけない」と体形を指摘された。 アマチュアの人間にそんなことを言われたらプロの恥である。情けない。これでは巨人も勝てないと思った。少なくとも坂本や岡本和真がチームの柱でいるうちは勝てない。 プロ野球は総じて練習量が少ない。というよりスタミナを付けるための練習をしていない。各球団の自主トレを見ていて、いろいろなメニューをやるが、それぞれの本数が少ない。しかも、笑いながらやっている。 われわれは早大時代、シーズンオフになると競走部の協力を仰いで、ダッシュや階段の昇り降りで自分を追い込んだ。180まで上がった脈拍を150に戻すまでの時間が早くなればスタミナがついた証拠だ、と教えてくれたのが競走部の小掛照二(三段跳びの元世界記録保持者)だった。そうして私たちは鍛えられた。 工藤公康も西武時代に100メートルダッシュを何十本と課されたが、最初は無理だと思っていたことができたことで、人間はやればできるのだと悟った。 ところが、私がロッテのGMを務めた1990年代半ばから練習量の変化を感じるようになった。トレーニングコーチが走る本数を減らし、マッサージを施す。選手から好かれることばかりやっていた。当時の評論家も「こんな練習じゃダメだ」と問題提起すればいいのに、誰も言わない。だから、選手にやさしい練習方法が今日までずっと続いている。 逆に言えば、やるべきことをやれば勝てる。簡単なことだ。