NYの書店で源氏物語と出会ったドナルド・キーンさん、美しい英訳に感動…紫式部は「人間の心を知っていた」
キーンさんはその後、米海軍の日本語学校を経て戦時中は語学将校となり、戦後は日本文学研究の道を歩む。源氏物語を専門的に研究したことはなかったが、講演では「日本文学の最高傑作は源氏物語に違いない」と評価している。
その理由について、紫式部が誰よりも美に敏感で、平安時代の宮廷の独特の美を描いたことなどを挙げ、「紫式部の一番の特徴は、人間の心を知っていたことでした」と語っている。その裏には、「(彼女は)政治的なことで大変な悩みを感じて源氏物語に逃避した」のかもしれないと、自身と重ねて類推している。
普遍的価値
第2会場では、キーンさんが京都大学留学中の54年に日本語で執筆した「西欧人の源氏物語の観賞」を紹介しながら、源氏物語の文学的価値と世界への広がりについて考察する。
アーサー・ウェイリーやエドワード・サイデンステッカーらの英語訳のほか、仏伊など各国語に翻訳出版された書籍を展示。ある調査によると、翻訳は43言語に上るという。そこに、時間と空間を超えた源氏物語の普遍的価値を見いだすことができる。
展覧会は、24日まで。入場無料。第1会場は、北とぴあ17階展望ギャラリーで、午前8時半から午後10時まで(無休)。第2会場は、北区飛鳥山博物館3階アートギャラリー第1室。午前10時から午後5時まで(月曜休館)。