「嘘つき」発言に苛立つ習近平…「中朝友好の足形」を埋め、「金正恩」と8カ月間交流なし プーチンと北朝鮮との蜜月も一因か
中国の「洪水避難民救出」提案を拒否
このようななか、7月下旬に中国遼寧省丹東市と国境を接する北朝鮮平安南道新義州市で記録的な豪雨が発生し、鴨緑江の水位が上昇し、新義州の島々に住んでいた北朝鮮住民を中心に1千人以上が死亡する大災害が発生した。それは、実は金氏の判断ミスによる人災との指摘がなされている。 中国側は7月27日、鴨緑江の水位上昇で、下流の北朝鮮の水力発電ダムの水門を開く必要があることが明らかになったとして、北朝鮮側に洪水避難民の救出を申し出たという。 中国の丹東警察当局者は「(北朝鮮の)島の住民を安全に中国に移動させることができる」と語ったが、金氏は「島民が中国に行けば、その後、韓国に逃げてしまう」と語るとともに、 「中国による救出や支援は拒否せよ。私が明日、現地に急行する」と指示。北朝鮮当局はなすすべもなく、ダムの水門を開き、住民が犠牲になるのを見ているほかはなかったという。 金氏が翌28日朝、現地到着したころには多くの住民が流されて、犠牲者が激増してしまった。その失敗を挽回するため、金氏は被災地を回り、急造のテントや食料などの支援を指示し、自身も避難民の中に入り激励したものの、結果的に金氏の判断の遅れで、多くの犠牲者が出る事態となった。これを糊塗し、住民の反発を招かないよう、金氏は避難民1万3千人を首都平壌に移送し、支援を続けることにしたのだが、いかにも後知恵だ。 北朝鮮では食糧の不足や思想統制強化で、「金王朝」に対する不満が高まっており、金氏自身も「王朝崩壊」への不安を捨てきれないようだ。 このところの中国との関係悪化やロシアとの関係強化も、結局のところ、金氏の中国への猜疑心のなせる業ともいえ、習氏は今後も金氏に悩まされそうだ。 相馬勝(そうま・まさる) 1956年生まれ。東京外国語大学中国語科卒。産経新聞社に入社後は主に外信部で中国報道に携わり、香港支局長も務めた。2010年に退社し、フリーのジャーナリストに。著書に『習近平の「反日」作戦』『中国共産党に消された人々』(第8回小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞)など。 デイリー新潮編集部
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