『モンスター』古田新太が満を持して登場 意外性の男“杉浦”が裁判のカギを握る?
亮子(趣里)の過去が明らかに
主人公である亮子がまとっているミステリアスな空気は、多分にバックグラウンドの見えない経歴不詳さに起因していると思われる。自身の経歴に関する事務所のメンバーの問いかけを、亮子はその都度はぐらかしてきた。司法試験に合格してからゲーマーだった過去があり、高校時代に春明が家を出てから、経済的な援助を受けながら一人で暮らしてきたと推察される。エマに「友達がいない」と指摘された亮子は、弁護士と対極にある没交渉の空間で生きてきたのだ。 そんな亮子にとって春明はどんな存在だろうか。岡本プレミアクリニックの背後にはコンサル会社がいて、クリニック側の弁護士として春明は登場する。春明がまとう雰囲気はどこか亮子と似ている。幼い頃、オセロで打ち負かされた父に、おおよそ10年の時を経て再会するとき、安易に感動の対面になるとは言いきれない。会話のない二人の関係は、父と娘というより、親戚のおじさんと姪っ子のような微妙な距離を感じさせる。亮子から見て春明は“謎”であり、法廷での対峙は失われた時間を取り戻す機会かもしれない。 止まっていた時計の針が動き出し、医療訴訟が詐欺事件の様相を呈した第5話で、気がかりなのは、亮子をアシストするコンビニ店員・城野(中川翼)のその後だ。亮子が唯一「友達」と呼べそうなのが城野で、いなくなれば大きな痛手だ。亮子と城野の関係は、圭子(YOU)と春明の関係にも重なる。濃い絆の親子と並走する友。ストーリーの進展にともなって揺れ動く関係性のアンサンブルが『モンスター』の世界を彩っている。
石河コウヘイ