BMW i5 メルセデスAMG EQE テスラ・モデルS 「運転を愉しむ」ために乗りたい1台は? 電動サルーン3台比較(2)
少々頼りないブレーキとアンダーステア傾向
今回のメルセデスAMG EQE 53には、オプションのAMGパフォーマンス・パッケージが追加されていた。英国では7995ポンド(約148万円)もするが、カーボンセラミック・ブレーキが付いてくる。 【写真】運転を愉しめる1台は? BMW i5 メルセデスAMG EQE テスラ・モデルS 内燃エンジンのM5とAMG GTも (119枚) また最高出力は686psへ増強され、0-100km/h加速は3.2秒へ縮まる。特に気張らずとも、明らかに598psのBMW i5 M60より速い。スポーティなドライブモードでは、アクセルペダルの反応が鋭くなり、AMGのスーパーサルーン感を高める。 それでも、トリプルモーターのテスラ・モデルS プレイドの加速には中毒性がある。ドライブモードをプレイドにすると、方向感覚が狂いそうになるほど。集中していないと、カーブ目前でブレーキングポイントを過ぎていた、ということにもなりかねない。 ブレーキ自体は、少々頼りない。回生ブレーキと摩擦ブレーキとの移行がシームレスではなく、加速相応の鋭い減速を何度か求めると、効きが弱くなるようだった。まるで、ひと昔前のマッスルカーのように。 充分なグリップ力を備え、コーナリング時のスタンスはフラット。しかし、ステアリングホイールへ伝わる感触は極めて薄い。アクセルペダルの加減で、ラインを調整していくことも難しい。リアタイヤは、フロントタイヤの軌跡を追うだけだ。 フロントノーズを内側へ巻き込もうと、右足の角度を深めても、活発になるのはフロントモーター。その結果、ホイールスピンが生じ、アンダーステアへ転じてしまう。
本物のエンターテインメント性を披露
トラック(サーキット)・モードを選べば、リアタイヤ寄りの特性へ変化する。だが、コミュニケーション力が増すわけではない。 エアサスペンションのチューニングも疑問。鋭い隆起部分をしっかりいなす柔軟性は備わる一方、タッチモニターを介して調整しても、乗り心地に大きな変化はない様子。パラメーターの幅は広いものの、一定の硬さが常に残るようだ。 EQE 53もエアサスペンションだが、こちらは更に硬い。サーキットのように平滑な路面でない限り、確かな落ち着きまでは得られない。 そのかわり、カーブが連続する区間では、本物のエンターテインメント性を披露する。着座位置は少々高めながら、手応えがあり正確な反応のステアリングは、3台でベスト。 コーナーへ飛び込めばドライバーを中心に旋回し、頂点めがけて狙い通りに切り込んでいける。後輪操舵システムの仕事も、i5 M60より遥かに自然に思えた。 ドライブモードを引き上げ、トラクション・コントロールなどを弱めれば、テールを僅かに振り回すことも可能。低速コーナーからの脱出では、パワーオンで軽いスライドへ持ち込める。 旋回時は、車重を感じる場面もある。常にコンピューターの制御下にあるという感覚も、若干拭えない。だとしても、EQE 53のドライビング体験は楽しいと表現できる。