「ひょっこりひょうたん島」60周年 ひとみ座、いまも全国で人形劇の魅力発信
一世を風靡(ふうび)したテレビ人形劇「ひょっこりひょうたん島」が初めて放送されてから今年で60周年。人形の操作などを担当した劇団「ひとみ座」(川崎市中原区)はいまも全国を駆け巡り、人形劇の魅力を多くの人たちに伝えている。 ひとみ座は昭和23年10月、鎌倉で創立され、その直後には人形劇専門の劇団として活動するようになった。その名が広く知れ渡るようになったのは昭和39年。NHKで放送が始まった「ひょっこりひょうたん島」で、人形の製作や操作などを受け持った。 井上ひさしさんと山元護久さんの原作で、週5日、5年にわたって放送された人気番組を支え、確固たる存在感を示した。劇団の代表取締役、友松正人さんは「あの当時はひとみ座にとってテレビ中心の時代だった」と指摘する。 その後、さまざまな可能性を追求する中で、小学校や幼稚園、保育園などの巡回公演や家族向け、大人向けの公演にも注力。「平気で2カ月ぐらいは旅をしていた。私自身が年間240日公演したことは覚えている」と友松さん。複数の班に分かれ、日本中を駆けめぐる態勢が整った。 近年は少子化が進む一方、コンピューターグラフィックなどの活用もあり、人形劇の注目度はかつてほどのものではなくなりつつある。最盛期には約90人いた劇団員も60人程度に減少しているという。 それでも、年間約700回の公演を行い、約11万2千人の児童を含む13万人以上の観客を集めるなど、現在も根強い人気を誇る。テレビも、人形劇番組自体は減少しているが、人形が登場する番組へのオファーは多い。 友松さんは「人の想像力を刺激して、生なき物に命が宿る瞬間こそが人形劇の魅力。それは絶対人類が手放さないもの」と力を込める。伝統をかみしめ、確固たる信念を胸に、これからも人形劇の世界を伝承していく。(橋本謙太郎)