「子どもが生まれたら休むかも」高畑充希(33)が「仕事よりもプライベートが断然大事」な“深いワケ”
「舞台に立っている時がいちばん生きてる感じがする」
しかし、高畑は公演後に振り返り、結果的に、自身が30歳になるとともに『ミス・サイゴン』も日本初演から30周年を迎えたタイミングで演じられたのは運命だったと語っている。社会の状況も2年前とは大きく様変わりしていた。 《ウクライナが侵攻されている今、戦争で犠牲になる人々を描いた作品を上演する意義ってすごくあったと思うんです。ともすれば、2年前にはファンタジーのように見えた物語も、今はリアルに感じる。しかも私自身、コロナ禍で生と死の境目の距離が縮んだ感じがしていて、そういう中でキムを演じられたのはすごく感慨深かったです》(『anan』2022年12月21日号) 話は前後するが、高畑は朝ドラ『とと姉ちゃん』(2016年)の撮影を終えたとき、両親から「お疲れさま。早く舞台が観たい」と言われたという(『週刊文春』2017年1月26日号)。彼女自身、本領は舞台という思いが強いのはたしかだ。あるインタビューでは《私は舞台に立っている時がいちばん生きている感じがするんです》と語っていた(『日経エンタテインメント!』前掲号)。 昨年(2023年)には、高畑がかねて自分のために芝居を書いてほしいと頼んでいた同世代の劇作家・演出家の根本宗子の手になる『宝飾時計』が初演された。根本は完全に当て書きで、10歳から29歳まで一つのミュージカルで主役を演じ続け、“奇跡の子役”と呼ばれた女優の役を高畑に与えた。同作のクライマックスで、彼女が椎名林檎から提供されたテーマ曲を歌うシーンは圧巻であった。
高畑充希が一番大事にしていること
ここまで紹介してきた発言などからもあきらかなように、高畑のプロとしての意識は高い。しかし意外にも、彼女が人生において最上位に置いているのは仕事ではないという。7年前に出た写真集に収録されたインタビューでは、これについて次のように語っていた。
「仕事よりもプライベートの方が断然大事」な理由
《家族や友達との時間とか、おいしいごはんを食べるとか、恋愛するとか、自分自身のプライベートのほうが断然大事です。もちろんお芝居は大好きですよ。お金をもらっている以上、やれることは全力で、アップアップしながらやります。でも演じるのは人間じゃないですか。だから自分自身が人間であることを楽しんでいるほうが、いろんな発想が生まれる気がするんです。それにこのお仕事は一生やるかわからないですし。息の長い女優さんになりたいとは思っているけど、たとえば結婚して子どもが生まれたら休むかもしれないし。仕事よりも、絶対に家族のほうが大事だから》(高畑充希写真集『ユメクイサバク』宝島社、2017年) 仕事以前に「自分自身が人間であることを楽しんでいる」というのは、先の「舞台に立っている時がいちばん生きている感じがする」という発言にもつながっているような気もする。 プロとして常に安定した演技を心がけるのは当然とはいえ、所詮は人間なのだから、いつも完璧というわけにはいかない。高畑自身、上記の「舞台に立っている時が~」の発言に続けて《舞台はその日によって、ダメな日もあれば調子いい日もあるし、伝わる日もあればそうでない日もあって、日々積み重ねていく感じが自分にも響いてくるんですよね》と語っていた(『日経エンタテインメント!』前掲号)。彼女にとって舞台が特別なのは、自分が一番人間らしくいられる場所だから、とも言えそうである。 来春には主演ミュージカル『ウェイトレス』の再演を控える。4年前の同作の日本初演時における高畑の演技は高く評価され、菊田一夫演劇賞も受賞した。つい先日、フジテレビ系で放送された『FNS歌謡祭』の第2夜では、その劇中歌を共演するソニンとLiLiCoとともにメドレーで披露し、改めて彼女の歌唱力が話題を呼んだ。実人生でも結婚という大舞台を迎える彼女が、劇中でどんなふうに役を“生きて”みせるのか、いまから楽しみだ。
近藤 正高