新型マツダMX-30は、かつてのエチュードやユーノス・プレッソを現代に解釈した1台だった! 個性光る和製SUVの改良モデルに迫る
新しいマツダの「MX-30」は、やっぱり個性的な1台だった! 早速テストドライブした小川フミオがリポートする。 【写真を見る】新型MX-30ナチュラルモノトーンの内外装(16枚)新しいインテリアにも注目!
摩訶不思議なデザインは不変
マツダのコンパクトSUV、MX-30が2024年10月31日に改良を受けて発売された。24年12月に試乗して、個性的なデザインと、快適な操縦性というキャラクターをあらためて認識した。 今回の改良点は以下のとおり。 ・AT誤発進制御に歩行者(前方)検知機能追加 ・ドライバーモニタリング(わき見)警報機能追加 ・リアシートアラート採用 ・10.25インチモニター採用 ・モバイル機器のワイヤレス接続機能追加 ・コネクテッドサービスの提供機能拡充(リモートエンジンスタート等) MX-30は、3つのパワートレインがラインナップされている。2020年に発売されたマイルドハイブリッドとEV、それに23年追加のロータリーエンジンを発電機として使うシリーズ式プラグイン・ハイブリッドだ。 今回乗ったのは、マイルドハイブリッドのナチュラルモノトーン(価格は¥2,935,900)。1997ccのエンジンに、スターター/ジェネレーターの機能をもつ小型モーターが搭載され、燃費を稼ぐと共に、加速時などにトルクを積み増す。 前輪駆動モデルだと燃費はリッターあたり15.6km。基本的に2.0リッターエンジンで走るSUVとしては、悪い数値ではない。 このクルマのいいところは、全長4.4mというボディサイズのわりに、重厚感のある乗り心地だ。かといって、アクセルペダルの踏み込みに対する加速性も、なかなかするどく、鈍重さは感じられない。 2ドアクーペ的なクロスオーバーというスタイルへの期待を裏切らず、適度なスポーティ性を備えている。そこも良い。「フリースタイルドア」といって、後席用の隠しドアを採用することで、スタイルと利便性を同時に追求。この思い切ったデザイン性もMX-30ならではのキャラクターだ。 前席ドアを開けないと後席ドアが開けないのは、しかしながら、不便ではある。安全設計のための構造上、仕方なかったのだろう。まぁ、普段はほとんどひとりかふたりで乗るケースが多い人には、これでいいともいえる。 マツダのモデル史を思い起こすと、ちょっとひねったデザインが好きなようだ。デザイン部長はその時どきでちがうので、企業のDNAみたいなものだろうか。 クーペなんだか、それともセダンなんだか、折衷型スタイルの3代目「コスモ」(1981年)を筆頭に、ハッチバックをクーペ化した「エチュード」(87年)、格納式ヘッドランプでスポーツカー的フロントマスクのハッチバック「ファミリア・アスティナ」(89年)、RX-7的なキャビンをもったコンパクトクーペ、ユーノス「プレッソ」(91年)などが、ぱっと頭に浮かぶ。 MX-30にしても、やはりクーペの要素が強めに入っている点で、上記のマツダのヒストリックモデルの系譜に連なっている……と、言ってもいいだろうか。 デザイン上の魅力は、もうひとつ、フロントマスクだ。いまもまったく古びていない。幅の薄さを強調したヘッドランプとグリル、それに厚みのあるバンパーで、スポーティさがうまく演出されている。 インテリアも個性的だ。クルマの多くは、クーペならレーシングカー的要素、SUVならオフロード用クロスカントリー型4WD的要素をいれることも多い。MX-30はどちらでもない。 リビングルームを思わせるセンターコンソールがあって、座り心地がいかにもよさそうなシートがそなわる(実際、座り心地はよい)。ミニマルな造型感覚で、その“油くさくない”雰囲気を大切にしているのが、マツダのこだわり。これはなくさないでほしい、と、あらためて思った。
文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)