自転車からの転倒、空軍士官学校の卒業式での転倒…バイデン大統領の「急所」とは?
今回は、ジョー・バイデン米大統領の最も「急所」となっている高齢問題について取り上げてみる。 米国民は、与党民主党大統領候補が確実視されているバイデン大統領の健康と高齢に対して強い懸念を抱いている。英誌エコノミストと調査会社ユーガブによる共同世論調査(23年1月4~16日実施)によれば、「もしバイデンないしトランプが2024年米大統領選挙で勝利したら、健康と年齢が大統領としての職務遂行能力に、どのぐらい影響を与えるのか」という質問に関して、55%がバイデン大統領に対して「非常に影響を与える」と回答した。 一方、ドナルド・トランプ前大統領に対しては23%で、バイデン大統領よりも32ポイントも低かった。今後、バイデン陣営がとるであろう高齢問題に対する選挙上の対策について考えてみる。
「お前の知ったことか」
バイデン大統領の高齢問題は、サイクリング中における自転車からの転倒、米空軍士官学校の卒業式での転倒、ドイツのアンゲラ・メルケル前首相と死去したヘルムート・コール元首相の言い間違えから、エジプトのアブデルファタハ・シシ大統領とメキシコのロペス・オブラドール大統領の言い間違えまで、枚挙に暇がない。 ここ数カ月の中で、殊に米国民に強く印象づけられたのは、バイデン不起訴の理由についての報道であった。その理由としては、「善意がある記憶力に乏しい老人」という印象を陪審員に与え、有罪立証が困難であるというものであった。 この不起訴を決めたロバート・ハー特別検察官は、報告書の中で不起訴の理由に、バイデン大統領の記憶力の弱さを指摘した。同大統領は副大統領に就いていた期間や、長男ボー氏の死亡した年について記憶が曖昧であったというのだ。 この報告書の内容に関して、バイデン大統領は、記者会見を開いて反論した。そこで同大統領は、事情聴取は2023年10月8と9日に約5時間行われ、イスラム組織ハマスによるイスラエルへの奇襲攻撃が同月7日に発生したので、危機管理の最中であったと説明した。 『米イスラエルに覚える“違和感” 日米関係に必要な“共感”』で紹介したが、バイデン大統領が若き上院議員として初めて訪問した国がイスラエルであった。ゴルダ・メイア首相(当時)に面会した際、彼女が語った「イスラエルの秘密兵器(精神)」について感銘を受けた。そのイスラエルがハマスからかつてないほど残虐な攻撃を受けたのだから、事情聴取よりも危機管理の方が、明らかに優先順位が上であったであろう。 さらに、バイデン大統領は記者会見で、長男ボー氏に関する質問について「お前の知ったことかと内心思った」と率直に述べた。同大統領は、東部デラウエア州の州務長官を務めたボー氏の政治キャリアに期待していた。回顧録『約束してくれないか、父さん:希望、苦難、そして決意の日々』(早川書房)で、2012年米大統領選挙でバラク・オバマ元大統領が再選を果たすと、バイデン副大統領(当時)は、2016年の大統領選挙に向けて着々と準備を進めていたことを明かした。 しかし、イラク従軍から帰国したボー氏が脳腫瘍になり、15年に死亡したので、バイデン氏は16年大統領選挙出馬を断念した。ボー氏の死は、バイデン氏にとってかなり衝撃的であったことは間違いない。そのボー氏の死について、特別検察官は尋ねたのだ。