自転車からの転倒、空軍士官学校の卒業式での転倒…バイデン大統領の「急所」とは?
特別検察官はトランプ任命の共和党員
実は、ハー特別検察官は共和党員で、トランプ前大統領が南部メリーランド州の連邦検事に任命した人物であった。しかも今年は「選挙イヤー」で、11月5日に大統領選挙があることを考えれば、ハー氏が政治的動機に基づいて、バイデン大統領の記憶力に焦点を当てて、トランプ前大統領の「援護射撃」を行ったという解釈が可能だ。 さらに、米司法省には現職大統領を刑事訴追しない慣例がある。となれば、ハー特別検察官は慣例に従って不起訴にせざるを得ないのだが、その際、トランプ支持者を納得させる理由が必要だ。バイデン大統領の記憶力を挙げたのは、トランプ支持者に対して一定の満足を与える狙いがあり、同時に同大統領にダメージを与える意図もあったのかもしれない。 トランプ前大統領は4件で刑事訴追され、91の罪に問われたが、それを支持基盤固めと支持率上昇につなげた。これに対して、皮肉なことにバイデン大統領は不起訴になったが、かえって高齢と記憶力の問題に焦点が当たってしまった。
効果のない「レーガン流」
本選を前にして、すでにバイデン大統領の高齢が大統領選挙の主要な争点になっている。そこで、ホワイトハウスのカリーン・ジャンピエール報道官は、バイデン大統領には「経験と知恵がある」と強調して、高齢問題を打ち消そうとしている。 その対策は、ロナルド・レーガン元大統領が用いたものである。1984年の米大統領選挙において、当時73歳であったロナルド・レーガン元大統領の高齢に対する懸念の声が、米国民から上がった。ライバルの民主党大統領候補は、56歳のウォルター・モンデール候補であったからだ。しかし、レーガン大統領は、テレビ討論会でモンデール氏の若さ(経験不足)を争点にしないと、ユーモアを込めて語り「高齢問題の危機」を乗り切った。 確かに、バイデン大統領には経験と知恵がある。ハマスがイスラエルを攻撃した際、ベンヤミン・ネタニヤフ首相に「怒りにまかせて行動してはいけない」とアドバイスをした。米同時多発テロで米国は、怒りに呑まれて行動を起こし、戦争の泥沼に入って行ったからである。 ただ、ホワイトハウスの「経験と知恵」の戦略は、効果を上げておらず、有権者を説得できていない。