エックス線遮る新素材 世界初、無色透明で軽量 弘前大(青森県)・山形大チームが開発
弘前大学と山形大学の研究チームが、世界で初めてエックス線を遮る無色透明で軽量な素材の開発に成功した。エックス線を用いる診断や治療などで、遮蔽(しゃへい)材として活用できる。主な原材料は「でんぷん」で、液体や柔らかく変形するものにも使え、リサイクルしやすいのが特徴だ。 弘大被ばく医療総合研究所の細田正洋教授(同大医学部大学院保健学研究科教授を兼任)のチームと、山形大有機材料システム研究科・高橋辰宏研究室の床次(とこなみ)僚真(りょうま)さん(博士後期課程2年、弘前南高校出身)らが約3年前から共同研究を開始。5日、研究成果を発表した。 通常、エックス線の遮蔽には鉛が使われ、エックス線検査の際に技師が着用する鉛入りエプロンや、検査室の窓の鉛入りガラスなどとして用いられている。しかし、重くなったり、ガラスが無色透明にならないなどのデメリットがあった。 床次さんはでんぷんを使うことで、形を自由に変えられる特性を持たせた。バリウム、タングステンなど金属を混ぜることで、鉛より軽く、エックス線遮蔽能力も同等かそれ以上の素材を開発した。 弘大側は遮蔽能力の計測などで協力した。国内特許は出願中で、4日には海外特許も出願した。 被ばく防止のエプロンの軽量化や透明なゴーグルなどの防護具のほか、空港の手荷物検査機の黒いカーテンを透明化することができるという。今後、弘大側の医療分野の知見を生かし、使い道などを探る。 細田教授は「さまざまな放射線が飛び交う宇宙での宇宙服への応用もできる。将来的に(さまざまな現場で)被ばく環境を整えていきたい」、床次さんは「課題は遮蔽率の向上。現在の2倍以上を目指したい」と話した。