交流戦3連敗の阪神に希望 前川右京待ってましたぁ~プロ1号 高卒3年目196打席目「長すぎましたね。やっと打てた」
「ロッテ5-4阪神」(31日、ZOZOマリンスタジアム) 阪神・前川右京外野手(21)が六回にプロ初アーチとなる同点2ランを右翼席へたたき込んだ。貧打にあえぐ打線にカツを入れた若虎は3-3の七回2死二塁でも右前タイムリー。9試合ぶりに4点目をもたらした。だが、1点リードの九回にゲラが同点犠飛を浴び、延長十回には漆原が押し出し四球で交流戦3戦全敗。今季初の4連敗となり、3位転落となった。 【写真】頬を膨らませた岡田監督「もうええわ」とだけ言い残し球場を後に ◇ ◇ 千葉の夜空に白球が舞い上がった。きれいな放物線を描きながら、グングン伸びていく。前川は祈りながら走り出した。「入ってくれ!」。ついに、ついに飛び出したプロ初本塁打。余韻に浸りながら、ゆっくりとダイヤモンドを一周した。 2点ビハインドの六回無死一塁。フルカウントから美馬の高め直球を捉えた。確かな感触を残して、バットを放り投げる。着弾とともに大歓声が起こり、静かに喜びをかみしめた。プロ通算69試合目、196打席目で待望の一本。「長すぎましたね。やっと打てた」。ベンチに帰ると、先輩たちからの手荒い祝福。ここで、ようやく笑顔になった。 これだけでは終わらない。同点の七回2死二塁では菊地の内角直球にバットを折られながらも、右前へ運んだ。執念の一時勝ち越しとなる適時打。塁上では左手でガッツポーズを作り、白い歯をこぼした。 春季キャンプからのテーマは一喜一憂しないこと。昨季は凡退の悔しさからバットをたたき付けたり、涙を流したりすることもあった。開幕1軍という目標は達成したがゴールではない。初詣で「1年間、しっかり戦えますように」と願ったように、上の舞台でプレーし続けることが最大目標だった。そのためにも感情の起伏が激しくては戦えない。この日も喜びを爆発させることはなかった。 オフには体とも向き合った。スイング時に腰を通常と逆方向にひねる、ツイスト打法が特長の一つ。ただ、昨季は力を入れすぎて右膝が内に入りすぎていた。歩行時やスクワットでも内側に入ってしまうほどの癖。改善のために、右のお尻を鍛えた。体をフラットにしたことで、正しい力を伝えられる。この日の一発は、まさにシン・ツイスト打法が実を結んだもの。追い込まれながら最後まで体を残して、白球に無駄なく力をぶつけた。 昨季は5月30日に1軍初昇格初出場。翌31日は3三振の屈辱を味わった。ちょうど1年後、今季初の3安打で成長を証明。手元に帰ってきた記念球は「家族に渡したい」と孝行息子な一面ものぞかせた。 8試合連続の3得点以下もストップさせ、チームが勝利となれば最高だったがサヨナラ負け。「勝ちたかった…」。試合後は喜びと悔しさが入り交じっていた。「また切り替えて、もう一回頑張ります」。5月最終日の希望のアーチが、虎の唯一の光となった。