「好き」に人生をかけること プロゲーマー梅原が語る可能性とリスク
「好き」という才能を潰すのはもったいない
――自分と向き合うことで、本当に好きなものや得意なものが何か、ご自身で納得できたんですね。 梅原大吾: はい。ゲームや麻雀に打ち込んでわかったのは、「好き」という気持ちは才能だということです。麻雀もすごく好きだし、真剣に打ち込んだつもりなのですが、ゲームほど好きじゃないんですよね。絶対譲れないというほどの気持ちになりきれなかったから、いざというときに取り組みが甘くなるんですよ。だから色々あった末に、気持ちで負けてやめてしまった。 こんな僕が断言できるのは、もし子どもが「これが好き」と言ったら、それは才能だからどうしようもない。その才能を潰すのはもったいないと思います。 ――好きなものがなかなか見つからない人はどうすればいいでしょうか? 梅原大吾: これはもうしょうがないですよね。出会うしかありません。僕はたまたまゲームに出会ったけど、そういうのがないのであれば、手当り次第いろいろなものに挑戦してみるしかないですね。
近年のゲーム規制の動きに思うこと
――最近ではゲーム依存症が社会問題になったり、ゲームを規制する動きもあったりしています。プロゲーマーの立場から、こういった一連の流れに対してどう思いますか? 梅原大吾: またか、って感じですね。自分が子どもの頃はそういうのがよくあった。ただ一方で、「規制されるぐらいじゃなきゃちょっと嫌だ」という気持ちもあります。僕は、みんなが同じ価値観でゲームを肯定することに違和感があるんですよね。 もともと「ゲームは何の役にも立たない」「ゲーセンは不良のたまり場だ」とか「ゲームばかりすると頭が悪くなる」なんて散々言われてきました。だから、いきなり肯定され過ぎても、それはそれで嘘くさいなと思ってしまう。内心は「たかがゲーム」「何がeスポーツだよ」って思ってる人もいるだろうし。 もちろん、ゲームというだけで頭ごなしに否定されるのは、良い気分ではありません。だからといって、「どうやらあの人たち(ゲーマー)をバカにしないほうがいいらしい」なんて無難に肯定されて、腫れもの扱いされるのも気持ち悪い。否定する人がいて、いいや楽しいんだという人がいて、ちょうどいいところに収まってくれないかなと思いますね。 ----- 梅原大吾 1981年青森県生まれ。14歳で国内最強となり、17歳で世界大会で優勝。その後一度はゲームの世界を離れたが、復帰後の2009年に世界大会で優勝。グローバル企業とプロ契約を締結し、日本人初のプロゲーマーに。「世界で最も長く賞金を稼いでいるプロゲーマー」としてギネス世界記録に認定された。著書に『勝ち続ける意志力』(小学館101新書)『勝負論』(小学館新書)など。 文:姫野桂