手帳と迎える新年(12月29日)
一年が暮れようとしている。 能登半島を襲った地震と豪雨災害、終結の手がかりがなかなか見えないロシア・ウクライナの戦禍やパレスチナの紛争、増え続ける闇バイト強盗や無差別犯罪、円安と物価高騰……。穏やかな年の瀬をと願いながらも、解決の糸口のみつからない“積み残し”に、心が落ち着かないまま年を越しそうな気配である。 せめて我が身のことだけでも、少しは整理しようと気を取り直し、一年使い込んだスケジュール手帳を繰ってみる。 あれこれ書き込んであるのを見ると、「今年もおかげさまでいろいろなことを経験させていただいた」と感謝をし、そしてまた「お疲れ様でした」と少しは自身を労いたくもなる。 一方、未記入の空白のままの、何をやったか思い出せない茫漠とした日がかなりある。「何もしなかった日があって当たり前」とは思いつつも、何か申し訳ないような、勿体ないことをしたような気分になる。 日々の出来事、思いついたこと、感じたことなどを全て手帳に書き残している人も多いという。手帳は、詳細な生活記録であり、日記であり、スケジュール管理をする秘書役であり、心模様を共有する相棒であり、なくてはならない存在と言えるだろう。
毎年秋、早い店では10月頭から、書店や文房具売り場にたくさんの手帳が並ぶ。 ある大型販売店の情報によると、今年の手帳市場に出品された数は、なんと2600種類に及ぶという。コロナの時期に一度売り上げが低迷し、スマホでスケジュール管理をする人も増えて手帳離れも危惧されたが、“自分だけの事柄をこだわりを持って自分の手で書き込む”ということに新たなファンがつき始めて、再び人気が盛り返してきたという。何事もAIで答えが出る世の中への、ささやかな抵抗としての手書き復活かもしれない。 一口に“手帳”といっても、ノート式、システム手帳、週間見開き、月間見開き、時間割式、メモ重点、年間プラン表、3年間プラン表、1月・4月・9月始まり、革製、布製、色、柄などなど、とにかくまさに使う人十人十色の組み合わせやデザインがある。「毎年必ず同じものを使う」という人もいれば「次々と違うものを試している」という人もいる。皆それぞれ、手帳売り場の前でじっくりと吟味をし、小一時間もかけてやっと、一年間付き合うお気に入りの一冊を見つけ出す。まさに手帳というものは、個人のプライベートな領域に深く関わっている重要な存在ということなのだ。
自分の手帳としっかり付き合うことで、少しは混沌とした毎日が整理できるようになるかもしれない。 一年の相棒となる真新しい手帳のページを開き、新たな年こそ世界が穏やかであるようにと祈りつつ、日々を丁寧に送りたいと自身に言い聞かせている。 (宮田慶子 白河文化交流館コミネス館長)