トランプ氏の関税引き上げ、経営トップらに警戒感…米中対立激化で業績に影響の可能性
主要企業の経営トップ30人を対象に読売新聞社が行った「新春・景気アンケート」では、米国のトランプ次期大統領の経済政策への警戒感が強まっていることもわかった。経営トップらは、日米の金融政策などの影響で変動する為替相場の動向も注視している。
20日に米大統領に就任するトランプ氏は、輸入関税を引き上げる方針を示し、特に中国が反発している。日本にとって中国と米国は2大貿易相手国で、対立激化は企業の業績に大きな影響を与える可能性がある。
トランプ氏の政策については9人が「ある程度懸念している」と回答し、1人は「大いに懸念している」とした。理由(複数回答)では、10人全員が関税引き上げで米中対立が激化し、世界経済を下押しする可能性があるとした。5人は関税引き上げで、輸出品の競争力が低下する恐れがあることも挙げた。「ますますブロック経済化が進んでしまう」(製造業)との懸念も聞かれた。
一方、3人はトランプ氏の政策に「ある程度期待している」と答えた。理由(複数回答)では、政策効果で米国経済が成長し、日本からの輸出拡大が見込まれることなどを挙げた。
関税が引き上げられれば、米国でインフレが加速して米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げペースが遅れ、円安・ドル高がさらに進む可能性がある。
最近の円安については、11人が「ある程度の良い影響が出ている」と答え、「ある程度の悪影響が出ている」(3人)と「悪影響が出ている」(2人)の合計を上回った。「原材料の輸入コスト増はあるものの、全体では海外業績の換算でプラス影響が大きい」(キリンホールディングスの磯崎功典会長CEO)という声が聞かれた。
ただ、「燃料価格や資材価格上昇によりコストが増加し、円安による訪日客収入の増加を上回る影響が出ている」(JR東日本の喜勢陽一社長)と弊害を指摘する声も出た。原材料価格の高騰によるコスト上昇に対しては、20人が販売価格に転嫁していると答えた。
25年の為替相場の予測では、最も円安が進んだ場合は、1ドル=160円前後が14人で最も多く、155円前後の12人が続いた。最も円高が進んだ場合は、1ドル=140円前後と、1ドル=135円前後がともに11人だった。