英雄ウエストはNBAロゴのモデルになりたくなかった?「変えてほしいと思う」と不快感を示す理由とは【NBA秘話:後編】<DUNKSHOOT>
そして2021年2月、一連の動きは新たな局面を迎え、再び物議を醸すことになる。 当時ブルックリン・ネッツに所属していた変わり者、カイリー・アービング(現ダラス・マーベリックス)が自身のインスタグラムに、コビーの新NBAロゴ案とメッセージを投稿。するとコビーの妻ヴァネッサが即座に反応し、“love this. ”と書き込むと、ほかにもラメロ・ボール(シャーロット・ホーネッツ)やスティーブン・ジャクソン(元ウォリアーズほか)といった複数の新旧NBA選手も賛同の意を表明した。アービングのメッセージは次の通り。 「(コビーへのNBAロゴ変更は)起こらなければならない。誰が何と言おうと、俺は気にしない。このリーグを築いたのは、“黒いキングたち”だ」 ここに来て、人種問題を絡めてきたのである。センシティブな問題だけに軽々なことは書けないが、あえて個人的意見を述べさせていただくなら、コビーの死とロゴ、そして人種の問題を強引に結びつける行為には、多少の違和感を覚えざるを得ない。一番困惑しているのは、変更賛成派の白人、当のウエスト本人なのではないだろうか。 ウエストは出演したテレビ番組で、現在のロゴに対する心情を吐露した際、それが少々ネガティブな内容だったこともあり、多くのメディアに取り上げられた。するとロゴ製作者のシーゲルの元へ、2000通ものメールが届いたそうだ。その90~95%が「ロゴを変更すべきではない」という趣旨のメッセージで、シーゲルはずいぶん気を良くしたという。 送られてきたメールには、新しいロゴのアイデアも一定数含まれていた。シーゲルがインタビューでいくつか紹介したなかから、個人的に興味をそそられたのが、“PJ・カーリシモ(元ウォリアーズ・ヘッドコーチほか)の首を絞めるラトレル・スプリーウェル(元ニューヨーク・ニックスほか)”と、“マグジー・ボーグス(元ホーネッツほか)の脇に立つマヌート・ボル(元ウォリアーズほか)”のふたつ。プロ中のプロであるシーゲルの手にかかると、いったいどんなロゴに仕上がるのだろうか。 それ以前の問題として、もしNBAがロゴ変更の新たな仕事を依頼してきても、シーゲルはきっぱりと断るそうだ。 文●大井成義 ※『ダンクシュート』2021年10月号掲載原稿に加筆・修正。
【関連記事】
- 追悼ジェリー・ウエスト――NBAロゴ誕生にまつわる裏話と、ロゴを巡る複雑なドラマ【NBA秘話:前編】<DUNKSHOOT>
- 追悼ジェリー・ウエスト――田舎の少年がレイカーズのエース、NBAロゴのモデルとなるまで【レジェンド列伝:再掲】<DUNKSHOOT>
- 「ポジティブな旅路だった」キッドHCが今季を回想。アービングは「仲間と一緒に成長できる機会を得られたことに感謝」<DUNKSHOOT>
- 元レイカーズのバトラーが明かすコビーとの“思い出深い瞬間”「コビーはコーチの書いたボードを消して『歴史の一部になりたいのは誰だ?』と言った」<DUNKSHOOT>
- アービングの“ロゴ踏みつけ”にセルティックスOB勢は激高。一方で現役選手は無関心?<DUNKSHOOT>