【2024年に介護保険制度改正】この春、介護の何が変わる?知っておきたいポイントをプロが解説
介護を必要とする高齢者が急速に増え、同時に核家族化も進んだことで、ここ数十年の間に介護は家族だけでは担えない切実な問題になりました。そこで家族の負担を軽減し、社会全体で介護を支えることを目的に、2000年に介護保険制度が施行。その後、財政状況や高齢化の進行状況などを踏まえ、3年に一度のサイクルで見直しが行われています。 【プロが簡単解説】前回2020年の改正ポイントは何だった? 2024年はその介護保険改正の年ですが、費用に関わることも多いので、介護をしている方は気が気ではなかったかもしれません。今回の相談者・恵美子さんも、前回の改正で痛い思いをしたため、戦々恐々としていたのだとか。話を聞いてみましょう。
介護のお金も春から変わる?
先日テレビを見ていたら、「この春から変わるもの」というタイトルで、春から値上がりする食品や新たな制度が紹介されていました。その中で、年金が実質2.7%目減りしたり、年金収入が高い人の医療保険料がアップするといったことが取り上げられていたんです。そこで初めて、モノの値段以外にさまざまなことが変わることを知りました。 私は数年前から父親の介護をしていますが、今年は介護保険改正の年なので、その内容が気になっています。実は2020年の改正のとき、介護サービスを受ける際の自己負担額の上限が、一気に4万4000円から9万3000円に上がってしまい、大打撃を受けてしまったんです。 同じように、老人ホームに入居する母親を持つ友人も、低所得にもかかわらず、食費の月額自己負担額が2万2000円も引き上げられたと嘆いていました。税金のお世話になっているのでありがたいとは思いつつ、お金の不安は付きまといます。 噂によると、2024年の改正では、今まで1割だった自己負担が2割になるとか。物価高も家計に影響している昨今、気になって仕方がありません。そこで2024年の介護保険改正のポイントをわかりやすく教えてください。
前回の介護保険制度の改正ポイント
介護保険制度が創設された2000年4月には184万人だったサービス利用者は、2024年1月には614.5万人となり、3.3倍に増えました。それに伴い、介護保険の総費用も3.6兆円から13.8兆円(2023年度)にまで膨れ上がっています。 多くの税金が投入されている介護保険制度ですが、今年は団塊の世代が75歳以上になる「2025年問題」へ向けた最後の改正ということで、早くから注目を集めてきました。ところがいくつかの大きな事案は見送られることが決まったのです。 ここで少し、前回の改正を振り返ってみましょう。 相談者の恵美子さんとそのご友人の家族が影響を受けたという2020年度改定(施行は翌2021年)では、高所得世帯を対象に、高額介護サービス費の上限額が引き上げられました。介護サービスを受ける際は、1ヵ月に支払った自己負担の上限額を超えたときに超過分が払い戻されますが、この自己負担額がアップしたのです。 対象となったのは、年収約770万円~1160万円未満(課税所得が380万円以上690万円未満)の世帯。該当世帯は、それまで一律4万4000円だった自己負担限度額が9万3000円に変更されたのです。さらに年収約1160万円以上(課税所得が690万円以上)の世帯においては、14万100円に変更されました。 これ以外に、介護保険施設の入居者やショートステイを利用する低所得者の食費負担の見直しも行われました。