アンディ・フグ最後の対戦者ノブ・ハヤシ、白血病克服し、戦い続ける理由
一度は逃げたが、格闘家の夢をあきらめきれず、単身オランダへ
ノブ・ハヤシとは、どんな選手なのか。話は前後するが、もともと格闘技に興味を持ったのはK-1が始まった中学3年のときだったと振り返る。高校に入ると空手を始め、夏休みにはプロレスラー・前田日明が率いるリングスに体験入門した。 「10日間程度ですけど、想像を超える厳しさにびっくりしました。練習の凄さは覚悟していたんですが、内弟子として身の回りのこと、掃除、洗濯、ご飯作り、買い物に行ったりとか、そういったもの全部含めて『わっ、すごいな。これは大変や』と」 そこでいったんは「逃げた形になった」というが、格闘家になりたいという夢は捨て切れなかった。そして高校卒業後、単身でオランダへ渡り、ドージョーチャクリキに入門した。 「チャクリキに行った理由は、ジムに寝泊りさせてくれたからですね。僕が行ったときは、ピーター・アーツはもうやめた後でしたが、ロイド・ヴァン・ダムなど強い選手はやはりいましたね。スパーリング中心の練習で、ほぼ本気で殴り合い、蹴り合うんで、ボコボコにされました」 単身で臨んだ海外修行、宿泊はジムとあって、今度は逃げ場はなかった。ボコボコにされても、すぐにまた練習を繰り返していたという。 「結局どこを見られているかというと、引かない、逃げないっていう部分。思いきりくる人間に背を向けて逃げるのは格闘家としてはダメなので、とにかく後ろを向かずに戦い続けました。実はチャクリキは、一番最初のスパーリングがハードなんですよ。そこで『コイツ、どのくらいできるんや』っていうのを見るんですね。続けているうちに、『おっ、また来たんか』と仲間意識みたいなものができてくるんです」
「静かで“達人”的だった」 アンディのラストマッチの対戦相手に
20歳になる年、チャクリキと5年間のプロ契約を結んだ。K-1デビューもそのころになる。2000年7月、K-1 SPIRITS 2000でアンディ・フグと対戦し左ストレートでKO負けしたが、それがアンディのラストマッチになった。翌8月に白血病で死去したからだ。 「僕、勝てると思ったんです。試合中、強さが感じられないんですよ。でも、結局はKOされてしまって。やっぱり、すごいなと思いました。ピーター・アーツとも試合したんですが、ピーターは、リングで対峙した瞬間に『あっ、コイツ、強いな』みたいな感じがあるんです。アンディは、静かなんですよね。“達人”的というんでしょうか。もう一度、やりたかったんですけどね」