2年連続の記録的猛暑 背景にあった“海の異変”とは? 漁業も影響大きく【振り返る2024宮城】
仙台放送
2024年も夏は記録的な暑さになりました。その暑さの背景にあったのは「海の異変」です。その異変は、漁業の姿をも変えつつあります。 街頭インタビュー 「仙台寒いかなと思って(ダウンジャケットを)持ってきたんですが、全然使えなくて困ったなという感じですごく暑いです」 2024年は、記録的な暖冬での幕開けとなりました。冬型の気圧配置が長続きしなかったことから全国的に気温が高く、東北地方は約80年前の統計開始以来、「最も暖かい冬」になりました。暖冬のあおりを受けたのが県内のスキー場です。 泉ヶ岳スキー場は雪不足のため、例年より1カ月も早く営業を終了。売り上げも例年の10分の1まで落ち込んだといいます。 川崎町のセントメリースキー場は、慢性的な雪不足やスキー人口の減少などを理由に事業継続を断念。今年、35年の歴史に幕を閉じました。 春も気温の高い状態は収まらず、東北地方は過去2番目に暖かい春になりました。暖冬も相まって、サクラの開花は今年も早まり、お花見シーズンも前倒しとなりました。 街頭インタビュー 「異常な暑さで毎日熱中症になるような状態」「日差しの強さがすごいなって思いました。うっと来るような」 そして、今年も顕著だったのが夏の暑さです。日本の夏の平均気温は去年と並んで過去最高に。東北地方も去年に次ぐ2番目の高さとなり、2年連続で異例の暑さに見舞われたのです。偏西風の北への蛇行や地球温暖化など、さまざまな要因が絡み合う中で、去年、今年の暑さにはある海の異変が影響していました。 仙台管区気象台 森下秀昭気候変動・海洋情報調整官 「大気が暖かかったことに加えまして、海面水温が高かったことも要因の一つと考えられます」 こちらは、今年8月の海面付近の水温を表したものです。三陸沖や北海道の南の海域では、平年より4度以上も水温が高くなっています。こうした状態は、海の表面付近だけでなく、内部にまで及んでいることが明らかになっています。その要因は…。 仙台管区気象台 森下秀昭気候変動・海洋情報調整官 「まず地球温暖化の影響によりまして、海面水温も高い状態が続いているのですけれども、それとは別に、三陸沖では黒潮続流が北緯40度付近まで北上してきまして、さらにその北側には、黒潮続流から切り離された暖水渦があります。その影響で三陸沖は特に高い状態が続いています」 通常、三陸沖は親潮の南下によって冷たい海水に覆われ、大気が冷やされます。また、海水と大気の温度差によって下層に雲ができ、それが日射を遮って、気温の上昇が抑えられます。しかし、親潮が南下せず海水温が高くなると、下層に雲ができにくくなるため、日射が増えて気温が上昇します。さらに、海から発生する水蒸気の温室効果によって猛暑がもたらされるというわけです。 気象庁によると、黒潮続流が三陸沖まで北上し海水温が顕著に高い状況はしばらく続く見通しだといいます。海水温の上昇は、魚の種類をも変えてしまっています。 10月、秋サケ漁が始まったばかりの南三陸の港は、解禁から9日経っても水揚げゼロの状態が続いていました。 宮城県漁協 関係者 「去年もかなり厳しかったが、何本かは獲れていましたので、今年はそれ以上に厳しい…」 宮城県内のサケの漁獲量は年々減り続け、ここ数年は記録的な不漁に陥っています。そして、去年、今年はピーク時の1パーセントにも満たない数にまで減少してしまっているのです。その背景には海水温があると、専門家は指摘します。 宮城県水産技術総合センター 伊藤博上席主任研究員 「日本で放流されて、4年ぐらいかけてベーリング海とか、アメリカの方まで回遊して戻ってくる魚ですので。少なくとも日本近海で放流した時の水温とか、帰ってくる時の水温が高くて、それが影響している可能性はあります」 その一方で増えた魚もあります。5月、気仙沼の魚市場に大漁に水揚げされていたのは、西日本を主な産地とする「マダイ」です。 宮城県水産技術総合センター 伊藤博上席主任研究員 「マダイは暖水性の魚種でして、宮城県でももともと獲れてはいたんですけど、特に今年に入ってから漁獲量が増えていまして、これは水温が高い黒潮が北の方まで来ている影響はあるかと思います」 このほか、タチウオ、チダイ、ケンサキイカなど、県内では馴染みの薄い暖水性の魚の漁獲量がここ数年、急増しているといいます。 宮城県水産技術総合センター 伊藤博上席主任研究員 「従前はサケやサンマなど、冷水性の魚種が主な魚種でしたので、そういったものと加工方法が違う魚種が獲れるようになってくることで、すぐに対応できるものではないと思います。(暖水性の魚を)有効に利用できるように加工方法を工夫したりとか、そういったことが必要かなと思います」 地球温暖化や海水温の上昇で、今年もこれまでにないくらいの極端な現象が相次ぎました。今後もこうした傾向は続くことが予想されるため、私たちの暮らしもそれに適応するように変化させていかなければいけないかもしれません。
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