阪神のシェルドン・ノイジー

【球界ここだけの話】シーズン残り5試合、大逆転Vへの機運が高まっていた9月26日。1軍が甲子園で練習をしているなか、阪神で来日2年目のシーズンを戦ったシェルドン・ノイジー外野手（29）がひっそりと帰国の途に就いた。 【写真】大相撲を観戦する阪神・ノイジー一家 「思うような結果が残せず、チームと最後までプレーできないことは残念です。最高のチームメートとスタッフ、阪神タイガース球団、そしてどんなときでも応援、サポートをしてくれたタイガースファンに心から感謝しています」 球団を通じて発表したコメントにさまざまな思いを込めた。今季は49試合の出場で打率・231、1本塁打、8打点にとどまった。完璧主義者ゆえに気難しさはあったが、報道陣への気遣いを忘れない一面もあった。昨年、優勝旅行先のハワイで取材を申し込んだ際、すでにN砲は家族と観光地に足を運んでいた。 「家族サービスで時間がとれず、申し訳ない。取材は後日でお願いしたい」 通訳に託した返答にも生真面目さがにじんだ。大の酒好きでもあり、来日後はアサヒビールを気に入った。「きょう行く店には〝アサヒ〟はある？」。家族と食事する店選びの際には事前のチェックを欠かさなかった。ゴルフ場でビールを飲み過ぎ、〝ベロベロ状態〟になったこともあったとか。 今季は主戦場の左翼で前川が台頭し、井上も長打力をアピール。1軍での出場機会を失い、早期に帰国した。NPBに在籍した2シーズンで通算182試合出場で打率・238、10本塁打、64打点という数字は物足りないが、虎党の脳裏に永遠に刻まれた助っ人でもある。 今季限りで退任する岡田彰布監督（66）が日本一に輝き、宙を舞った2023年11月5日、日本シリーズ第7戦（京セラ）。0―0の四回1死一、二塁で宮城の内角低めのチェンジアップを捉えて左翼席へ先制3ランを突き刺し、オリックスとの頂上決戦を制する原動力になった。 「残りのシーズン、阪神タイガースの優勝、日本一を応援しています」 ノイジーの強肩は投手陣を何度も救った。クレバーなプレーが持ち味だった寡黙な男は、下克上での日本一を目指す虎の戦いを海の向こうから見守る。（新里公章）