「これがないと大変なことになる」塾帰りの高校生でほぼ埋まる列車は減便 赤字路線維持のため「不便だけれど…」
長野県のJR小海線は16日のダイヤ改正で、小諸駅(小諸市)を夜間に発着する上下各1本の列車が削減される。この2本に乗車してみると、高校生やアルバイトの大学生、佐久平駅(佐久市)で北陸新幹線(長野経由)から乗り継いだ出張者らが乗っていた。利用者は今回の削減で「不便になる」と口をそろえる一方、大幅な赤字が課題の同線を維持するためには「やむを得ない」と理解を示す声もあった。 【図】JR小海線 小諸―小淵沢間の駅
11日夜、中込駅(同)のホームには、削減される午後8時54分中込発小諸行き下り列車が停車していた。2両編成が多い小海線だが、この列車は1両だけ。発車時の乗客は記者を除き3人だった。中込駅が最寄り駅の野沢北高校を今月卒業し、進学を控える中本樹(いつき)さん(18)=小諸市=は、「塾が終わるのが午後8時半で、普段は席がほぼ埋まるくらい高校生が乗る」と話す。
ダイヤ改正後、中込発小諸行きの発車時刻は、午後8時14分の次は同9時51分になり、間隔は1時間半以上に広がる。この日は中込駅周辺で友人と遊び、帰宅のため小諸駅まで乗車した中本さん。高校時代はほぼ毎日、塾帰りにこの列車を利用した。「(野沢北高の生徒は)この列車がないと大変なことになる」とつぶやいた。
離れた席に座っていた上田市の大学生伊藤叶生(かい)さん(19)は中込駅が最寄り駅の塾に週2回勤務。これまで午後8時40分まで勤務していたが、ダイヤ改正後は同8時までに繰り上げる。「9時51分発の列車では翌日の学業に影響が出てしまう」ためだ。苦渋の決断だったが、伊藤さんは鉄道好き。小海線存続のためには「多少の不便は仕方ない」と受け止めている。
佐久平駅では20人ほどが乗車。新幹線から乗り継いだ小諸市の男性(66)は月数回の東京からの出張帰り。「1本後は最終なので、ダイヤが乱れた場合に備えてこの列車に乗ることが多い」とし、「今後は1本前か後に乗るしかない」と話した。
JR東日本長野支社は今回の削減について、「利用状況など総合的に判断した」と説明。列車1本の運行コストについては「非公表だが、決して安くはない」とした。
12日は、上りで削減される午後8時13分小諸発の列車に乗った。2両編成で発車時は14人が乗車。臼田(佐久市)、青沼(同)と駅を過ぎるたびに人数は減り、終着の小海駅(小海町)では2人に。佐久平駅から小海駅まで乗った高校2年生の女子生徒(17)=小海町=は「小海周辺は過疎化が進んでいるから減便は仕方ない。来週からは1本遅い列車で帰る」と静かに話した。