日商会頭、最賃目標前倒し「独り歩き」に待った「中小企業や地域経済に影響」
日本商工会議所の小林健会頭は18日、石破茂政権が意向を示した最低賃金の引き上げ目標の前倒しについて「最低賃金(全国平均)はこの2年間で94円の大幅な引き上げとなっている。さらに大幅な引き上げが続けば中小企業の影響や雇用、地域経済への影響が強く懸念される」とするコメントを発表した。 【比べてみる】日本を含む5カ国 フルタイム労働者の賃金中央値に対する最低賃金の比率 石破政権は「最低賃金1500円」の目標達成時期を従来の2030年代半ばから20年代に前倒しすることを目指している。24年度の最低賃金は全国平均で1055円。前年度からの上げ幅は51円、伸び率は5・1%でいずれも過去最高だった。今後5年で目標達成する場合、445円の増額が必要になる。単純計算で毎年7・3%の伸びが求められる。法律で定められる最低賃金は守らなければ罰則がある。小林氏は改めて中小企業の支払い能力を十分踏まえるよう求めた格好だ。 小林氏はコメント公表後の定例記者会見でも最低賃金について言及。「新政権発足以来、一連の流れをみると、どうも(目標前倒しが)独り歩きしている」と述べ、政労使の意見交換を前に「達成時期20年代」が既定路線になりつつあることに危惧を表明した。この上で、「賃金のかさ上げは賛成だが、速度と度合い、経営者の支払い能力を考えると、一番懸念しているのは地方の小規模経営者だ」と話した。実際、最低賃金近辺で雇用を確保している小規模経営者から懸念の声が多く上がっているという。 記者会見では厚生年金の加入要件である「106万円の壁」撤廃の議論で、保険料を企業側が肩代わりするなど経営側の負担増が取り沙汰されていることについても触れ、「不公平感がある。企業により多い負担を求める理由がない」と述べた。(佐藤克史)
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