趣里主演・異色のリーガルドラマ『モンスター』誕生秘話「トラブルの理由をあえて曖昧に描く意味」
サブタイトルへのこだわり
精子提供をはじめ印象的なエピソードが多い中、ぞっとするラストだった1話『悪意の所在』に心をつかまれた視聴者は多い。1話に自殺教唆をテーマにした『悪意の所在』を持ってきた狙いは何なのか。 「1話ですが、最後まで見ると自ら命を絶った川野紗江(藤吉夏鈴)の背中を押したのは、カウンセラーの梅本ますみ(美波)かもしれない。ただ、川野を追い詰めた背景にはパワハラ上司の上岡弘一(戸田昌宏)の存在もあります。さらには、彼氏の塩屋遼(萩原利久)が暴言を吐いたことの影響も少なくない。とはいえ、そこに向かおうとしたのは川野自身の意思です。つまりは川野の選択には明確な理由があったわけでも、誰かの確実な悪意(殺意)があったわけでもない。 実際に世の中で起きているいろいろな事象の原因は1つではないですし、ハッキリとしていないことは往々にしてあります。本作でもそこは強調したかったところです。『依頼人に起きたトラブルの理由を明確にはせずに曖昧に描いていくドラマである』ということを示したかったため、『悪意の所在』を1話にした部分は大きいです」 また、演技やストーリーだけではなく『嘘と選択』『愛の末路』といったサブタイトルも印象的だ。小説のような短い文字数のサブタイトルにしている理由として、加藤氏は「サブタイトルはTVerやFODなどの配信サイトで表示されます。やはり地上波のドラマですので、地上波で視聴してくれた人がサブタイトルを見た時に、『このエピソードで描きたかったことはこういうことだよ』ということを伝えられるようなサブタイトルにしています」と細部までのこだわりを語る。 最後に「最終章に向けて、9話で環境汚染を引き起こしている疑いのある産廃処理場をどうにかしてほしいという依頼人が亮子のもとを訪れました。10話、そして最終話はこの依頼人と対峙していくことになります。亮子はこの事象の何を観ていくのか、また『モンスターとは何たるか』ということも考えてもらえればと思います」と締めた。
望月 悠木