いつもの煎茶を「玉露」に変える、驚きのお茶の淹れ方があった
その淹れ方、間違っています
職場で不意に大切な来客があり、上司から「悪いけど、2人分のお茶を出してくれる?」と頼まれました。あなたは、自信を持っておいしいお茶を淹れられますか? 自分で飲むのではなく誰かのために淹れる場合、その淹れ方ひとつで味や色、香りも大きく変わってしまう緑茶は、少々気負いを感じてしまうお茶かもしれません。 目の前に煎茶の茶葉が入った茶筒と茶器、熱湯の入った保温ポットがあります。さて、あなたは普段どのように淹れているでしょうか? まず、茶筒の蓋を容器の代わりにして、2人分の茶葉を目分量で測ります。それを急須に移し、保温ポットのお湯を急須の八分目まで入れます。急須の蓋をしたら、茶葉の成分がよく出るように急須を手元でクルクルとゆっくり回しながら1人分ずつ茶碗に注ぎ入れ、茶托に乗せて客人から先に出しました──。 「そうそう、いつもそんな感じで自分も淹れている!」と頷いたあなたは、残念ながら、ふるまったお茶の味も、淹れた手順も、お客さまから苦々しく思われている可能性が高いかもしれないですね。 下手をすれば、「基本的なおもてなしができない=社会人なら身についていて当前の常識がない」とみなされて、まるで「デキない人」という烙印を押されかねません。 「そんな、お茶一杯で大げさな!」と思われるかもしれませんが、人の言動は一時が万事で、物事の捉え方や考え方、取り組む姿勢というのは、総じて一貫性があるものです。そのため最近は、相手の気持ちを察して動けるコミュニケーション力の高い人や、社会人として当然のマナーが身についている人が、周りから一目おかれる時代になっています。 相手を喜ばせるもてなしがサラリとできる人は、仕事でも取引先との交渉がうまく、「デキる人」と認識されます。おいしいお茶を淹れられるということも「もてなし上手」の一つの要素というわけです。 では、冒頭のお茶の淹れ方は、一体、どこがまずかったのでしょうか。はじめに「相手に一目おかれるお茶の淹れ方」を知って頂いた上で、NGだった点を解説していきましょう。 【おいしい煎茶の淹れ方】 (1)保温ポットのお湯を湯呑み茶碗に入れて温めておきます。 (2)急須に人数分の茶葉を量って入れ、お湯を注ぎ、蓋をして蒸らします。 一番茶のうま味や甘みを引き出したいときは、70℃前後の低めのお湯で淹れて2分(深蒸し煎茶の場合は1分)。渋みや苦みを利かせてさっぱり飲みたいときは90℃前後の熱めのお湯で淹れて1分蒸らします。 (3)温めておいた茶碗に注ぎます。最後に急須を上下に小さく振って、お湯を一滴残らず注ぎ切ってください。 おいしいお茶を淹れるために大切なのは、計量、適量、適温の3点です。 茶葉の量は、目分量ではなく、必ず茶さじかティースプーンを使って適量を急須に入れましょう。二人分の煎茶は4~6g、ティースプーンで2~3杯が目安です。 保温ポットのお湯を直接急須に入れてしまうと、お湯の量が多すぎたり足りなかったりして、お茶の味がキマりません。また、保温ポットのお湯の温度は100℃近くあり、煎茶を淹れるには熱すぎます。お茶はその種類によって、おいしく抽出できる適温があるのです。 しかし、計量カップや温度計は必要ないのでご安心を。お湯の量は、保温ポットから人数分の茶碗に湯を入れれば、一人分の湯量を測りながら茶碗を温めることができてしまいます。 湯温については、「茶碗に一度お湯を移すと、湯の温度は10度下がる」と覚えておくといいでしょう。煎茶を淹れるのに適した湯温は70~80℃。ポットのお湯を2度ほど茶碗に移しかえてから急須に入れれば、ちょうどよい温度に下がります。 急須にお湯を入れたら、茶葉の種類に応じてしばらく蒸らしてください。すぐに茶碗に注いでしまうと、茶葉に含まれる成分を十分に抽出できず、うま味を引き出すことができません。 また、茶碗に淹れる際は、急須をクルクル回さず、静かに注ぎましょう。一見、茶の成分をよく出せる気がしますが、おいしいお茶を淹れるためには逆効果で、余計な雑味を出してしまう原因になります。 二人分の茶碗に注ぐときは、一人分ずつではなく、お茶の濃度が均等になるように二つの茶碗へ交互に注ぎます。 そして、急須の中のお湯を最後の一滴まで茶碗に注ぎ切ることも大切です。そうすることで、二煎目もおいしいお茶を楽しむことができます。少しでも急須の中にお湯が残っていると、その間、茶葉からは茶成分が抽出され続けるため、えぐみの原因になり、せっかくのお茶をまずくしてしまいます。 いかがでしょうか。基本を知ってさえいれば、難しいことや手間になることは何もありません。一度覚えてしまえば、次からは自信を持って淹れられるはずです。 ここで、なぜ用意するお湯の温度がなぜ重要なのかについてご説明しましょう。 お茶は、同じ茶葉でも使うお湯の温度によって抽出される成分が違ってきます。言い換えれば、淹れたお湯の温度によって、お茶の味や色、香りが変わってしまうのです。